番外・過去拍手ほか書庫
たまには素直に甘えよう(望×怜)
普通よりちょっとだけ値が張る小さなカップのアイス。
新発売の抹茶ラテ味をすくう。
「んー…っ、おーいひいっ」
自室のソファーにもたれ、幸せな一時を甘いアイスと共に味わう。
するとのんちゃんがノックも無しにいきなり顔を出し、スプーンをくわえたまま固まったのをじっと見つめられる。
「あーに?」
何か用があったんじゃないの、と首をかしげても黙っているからもう一口抹茶ラテ味を含む。
「味見さーして!」
カップから視線を上げる間も無くされた味見は直接口からで、油断していたのをいいことに奪われていく抹茶ラテ味。
呼吸を整えながら、見せつける様に唇を舐めるのが目に入った。
「口から…!口からぁー!」
それはそれは心臓がバクバク鳴って、どう処理していいかわからない。
スルッとさりげなく両手からアイスを取り上げられテーブルへ。
すると何を企んでいるのか、正面から肩に手を置いたまま恐ろしいほど楽しげな笑みを浮かべ、甘く名前を呼ばれる。
これは仕事用の顔。
壱織の時の格好つけた一面を素直に格好いいと感じてしまっている事に、きっとこの人は気付いている。
その上でお願いがある、なんて事を平気で言ってみせる。
「着物着てみよう?」
どうせ断るのも許さないくせに。
「何で?」
「怜ちゃんが着物姿で乱れるところが見たい」
そんな下心丸出しの要求を口に出して言っちゃうんだ。
のんちゃんだから仕方ないと思えるあたりがもう天晴れ。
それでも、まさかそんな事しないよね?冗談よね?と内心ヒヤッとする。
「着物風ドレスでなら酔ってちょっと乱れたけど、ちゃんと着物で俺が乱れさせてあげた」
悲鳴を上げる余裕も無く、反射的にその辱しめんとする口をふさぐ。
反応を見て喜んでるのはもうわかってるけど、あんまり言われ過ぎても赤面して黙るぐらいしか出来ない。
なのにまだ許してくれる気が無いのか、ふさいだ手に舌が這う。
こうなったらさすがにただ遊んでるってだけじゃ済まなくて、いよいよその意図が解らなくなりビクリと肩を震わせて腕を引っ込めてしまう。
「何ぃっ?何が楽しいのっ?」
ひどい、と思う。
「いじわるばっかりぃ…っ」
うつむいてむくれるばかりか、涙目になればのんちゃんは困るのかもしれない。
そりゃあ普段からいじめて遊ばれている気はするけど、今回ばかりは雰囲気が違って恐ささえ感じる。
構うもんか。
思い切り困って反省すればいい。
バカ、いじわる、と呟くほどの声で控えめになじる。
「怜ちゃん。何かあった?」
静かな低音の問いに首を振る。
「なら、何で怒ってる?」
ズキンと胸が痛んで、自分が核心を突かれたんだと気が付く。
けれど自分でもその正体が掴みきれない。
答えないのを見て諦めたのか、それ以上は問い詰めず隣に腰を下ろした。
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