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番外・過去拍手ほか書庫

さっきの反動か甘えたい気分を抑えきれずに、肩に頭を乗せてぴったりくっつく。
くすりと笑ったのが聞こえて照れ臭くなったけれど聞こえない振りをした。

思えばここは京とのかつての記憶を思い出した場所でもある。
過ごしたのは少ない時間だったのかもしれないけれど、大切な思い出をなるべく多く記憶していたい。

「もっと思い出せればいいのに」
「俺が代わりに覚えてるよ」

つい漏れてしまった言葉をすべて見透かす様に返ってきたそれに驚いて顔を見る。

「照れた笑顔が可愛いのは昔からだね」

そんな事を言われるとまんまと照れてしまう。

「黒川が嫉妬して殴り合いのケンカになった事があった」
「え!?何それ、聞いた事無いぞ!?」
「ああ。言ってなかったからな」

さらっと言って続けるが、聞きたいから黙って耳を傾ける。

「どっちが千草と仲良くするかで争って結局千草に決めてもらった」
「それで?」
「当然俺だろ」

自信満々で言うのが可笑しいけれど、それが本当らしいから仕方ない。

「そしたら逆上したアイツが千草を突き飛ばして泣かせたから、千草をよしよしして見せ付けてやった」
「黒川の愛情表現は激しいな」
「はははっ。な?それに比べりゃ俺は優しいだろう」

その通りだけれど素直に頷くのもしゃくだから、笑って返事はしなかった。

「俺はもう、千草のあんな……悲しい顔は見たくない」

敢えて口にはしなくても、それが何を指しているのかわかる。

「千草にはそうやってずっと変わらず笑っててほしいから。だから守るよ」

嬉しすぎる言葉で泣きそうになるのを堪えて顔を反らす。
呼ばれて目を合わせてしまうと本当に泣いてしまいそうで反らしたまま居ると、あごを支えられて上向かされた。

「千草?」

その仕草が、声が、表情もすべてが優しくて泣ける。

「だって…っ、嬉しくて、泣きそうだからっ」
「ありがとう。俺も嬉しいよ」

額に唇が触れ、照れると同時にもっと抱きついて甘えたい衝動にかられる。
自ら積極的になった時に限って写真を撮られたりするから我慢したかったが、さっきみたいにちょっとした誤解やすれ違いが起こると悲しい。
とても口に出してなんて言えないから、腰に回された手とは違うもう片方を取って腰の方へ引っ張る。
それで悟ってくれた京はふっと笑みを溢すと、何も言わずにぎゅうっと抱き締めてくれた。

「可愛い」

つい漏れたかの様に呟いたそれにもまた頬が熱くなる。
さらりと指が髪に差し込まれて二度目のキスが額に降る。
この幸せをどう伝えればいいだろう。
表しきれない想いが一杯で自分が耐えられなくなりそうだ。

両手を背中に回して、胸に擦り寄る。
掛替えの無い、というのはきっとこんなに想う人に使うのだろう。
自分から無くなってしまう事などとても想像がつかない、大切な恋人。

短い言葉で想いを囁く。
俺も、と同じ言葉が降った。

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あきゅろす。
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