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Desert Oasis Vampire

グレンは顔を動かして、庭の緑に目をやった。
静かに、何処かへ思いを馳せて語る。

「こうして外に出て歩けたり、人と会って話せるようになるとは思わなかった。ずっと部屋に閉じ込められて、そこで生きていくんだと思った」

生に絶望した。
自分に絶望した。

未来に明かりなんて無くて、だからフォードの出現はとても眩しかった。

「今も、君達の様には生活できていないかもしれない」

少女達を一瞥し、紅茶へ視線を落とす。

「けれど、これで随分自由になった」

こうしてゆったりお茶を飲み、誰かと話すなんてあり得なかった。

「時々発作で倒れるし、体が自由にならない時もある。日にも当たれない。だけど、それでも今の自分がある事に感謝はしてるんだ」

ここまで来られたのはフォードのお蔭だ。

「体がそんな状態だからね。例え大切な存在ができたとしても、きっと互いに苦しいだけになってしまう」

心が通じあえても、きっと自分がもどかしくなる。
欲が出て、己の体が、呪いが憎くなる。

「それでもグレン様なら、支えたいと思う人が沢山居ると思います。すべて捧げても幸せだと思う人が」

自信を持ってインタビュアーは言った。
少女達は初めて、グレンの苦笑を見た。

「こんな軟弱で情けなくても、一応男だからね。そういう支えられ方はつらい」

考えるなら、本当の人間になった時だ。
そうして初めて、その資格が得られる気がする。

「恋愛としてじゃなくても、好ましい人柄はあるでしょう?それを答えてさしあげては?」

助け船を出したのはフォードだ。
グレンとの甘やかな夢も希望も削がれ、しゅんと落胆していた少女達を救う。
それなら……と考えるグレンには、思い当たる答えがあった。

「偽らず、素直に自分を表現できる人は尊敬する。心のままに泣いたり、笑ったりできるのはすごい事だ」

グレンにはそれが信頼に繋がる。
心のままに動き、その人が透けて見えることが。
そうして初めて、グレンの目を止まらせるのだ。
だから髪が長いの短いの、背がどうの体型がどうのというのは関係ない。
二の次なのだ。

「見た目なんて、本人が気に入ってしていればそれでいい。逆にこちらの要望通りにされてしまう方が不安だ」

少女達はその理屈が理解できず、不思議そうに顔を見合せた。

「自分好みになったら嬉しいものじゃないんですか?」
「やっぱり、好きな人にはオシャレでキレイにいてほしいですよね?」

世の中の流行にうといグレンには何が今時のオシャレかわからないし、好みも無いので注文のつけようがない。
例えば……と、グレンは一人の少女を指した。
指された方は身を固くしている。

「俺がその髪を切ってくれと言ったとする。そして君は言われた通りにする。俺がそうしてほしいと願い、君もそうしてもいいと思ったからそうしたのだろう」

一つ一つに頷きながら、少女達は耳を傾けた。

「けれど君は、そこまで長くなるまで伸ばしていたのだろう?」

照れながら頷く少女の栗毛は、背を覆うほどだ。

「それを、俺の一言で潰してしまうのは申し訳ない。君の意思を、俺の勝手で」

でも!と少女達は口を開いたが、グレンは首を振って続ける。

「真実、君は望んで、喜んでそうしたいと思うかもしれない」

少女達はまた大きく頷いた。

「それでも俺には、気になってしまう。余計な事をあれこれ考えて、苦しくなってしまう」

面倒な奴だ。と、自嘲を漏らす。

「だから自分の意見がしっかりあって、それが正直に透けて見えてしまう方が楽だ」

自分が面倒で我儘だとわかってる。
わかってるからこそ、それに付き合わせてしまうのが苦しいのだ。
だから、人との接触は神経をすり減らす。

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あきゅろす。
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