[携帯モード] [URL送信]

Desert Oasis Vampire

「普段どう過ごされてるんですか?街へはあまり来られませんよね」
「外へはあまり出ない。皮膚が弱くて、日に当たると火傷してしまうから」

傘や手袋の訳を知り、少女達は顔を見合せて頷きあい、真剣な眼差しを再びグレンへ戻す。

「体調が悪いこともあるし、なかなかね。フォードが許してくれないんだ」

ちょこんと肩をすくめ、冗談めかして言う。
二人に流れる穏やかな空気から、それが戯れだとわかる。

「青い顔で寝込む姿を見れば、無理してほしくないと思うのは当然でしょう」

フォードは深刻にならないよう軽い調子で返したのだが、少女達は感情移入して深刻にとってしまった。
そして体の心配をする。
正直に言ったって仕方ないので、原因不明の体調不良だと医者に言われたままを言った。

「倒れてしまうとしばらく寝込むことになるから、うさぎのルイが可哀想だ」

そう目を伏せたグレンからは、愛兎への愛情が感じられた。
ルイの事を聞かれると表情がゆるみ、ふんわりと空気も和らぐ。

「黒うさぎでね。街で初めて見た時、とてもびっくりしたんだ。うさぎが黒い!って」

フォードがプレゼントしてくれたと話し、視線を交わす主従に少女達はドキドキした。
くすくすと笑いあい、仲がいいんですね。と感想が漏れる。

フォードは微笑を固定したまま。
グレンはゆっくりと瞬きをしただけだが、薄く開いた唇からふっと息を漏らした。

「普通の主従からするとそうだろうけど。……ちょっと違うかな」

そんな明るく、平和的なものではない。
その絆はもっと暗い場所にあり、辿れば深刻なものである。

「ずっと閉じ込められてた部屋にフォードが来てくれた時、言ったんだよ」

それは間違いなく、救いの予言だった。

『お迎えに参りました。あなたをお救いする為に』

天使だと思った。

『私はその為にやって来たのですから』

そして何かある度に言うのだ。

『私はあなたの為にあります』と。

家族と思ってと言ってくれたフォードは、本当の家族より家族らしい存在だ。

「ただの世話係とは違う。いわば、運命共同体なのかな」

笑むでもなく悲しむでもなく、坦々と告げられた心に触れ、少女達はつらそうに笑みをつくった。
フォードは頑張ってすました顔をはり付けて堪えていたが、内心では動揺していた。
運命共同体という言葉に。
ずっと言葉の裏にあった、フォードの思いに気がついていたのだ。
いや。グレンがそこまで察してくれたんじゃなくても、そう思ってくれていたことが嬉しい。
自分が、グレンあってこその存在だと。


「ところで、あのうさぎ達は元気?」

前のめりの高校生の間から、中学生達へ問い掛ける。
こっちを見た!とでもいうように、彼女達は肩やひじで小突きあった。
緊張ですぐに言葉が出ず、こくこくと何度も頷く。
リサもグレンの前では緊張するが、皆と違って面識があるので、固まる友人達に焦れてお知らせしたい事を伝えようと口を開いた。

「グレン様がいらしてから、うさぎ達大人気なんです。今までは関心が無い人が多かったけど、ねっ?」

一人で喋って目立つと困るので、友人達にも話をふった。

「グレン様が座った席はスペシャルシートです!」
「専用のお席ですから、また、ぜひ!」

もこもこと動き回る姿を思い出し、自然とグレンに笑みが生まれた。

「また、あの子達に会いたい」

こんなことなら写真を撮ってくるんだった!どうして思い付かなかったの!と、中学生達は悔しがった。

中高生が大好きなお待ちかねの恋愛の話に至ると、少女達の目は煌めいた。
しかしグレンにとっては非現実的なものである意識が強く、自分のこととしてそれを考えられない。
好きな女性のタイプなど考えたこともなかった。
だから、それを正直に明かすしか答えが無い。
すると少女達はわかりやすくがっかりと残念そうな顔をした。

[*前へ][次へ#]

21/23ページ

[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!