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Desert Oasis Vampire

いざ取材許可を取ろうとした新聞部代表のインタビュアーは、紅茶に口をつけるヴァンパイア様に見惚れた。
それは他の面々も同じで、はっと思い出して交渉する代表者の声で我に返る。

「私達、高校で新聞部に所属しています。ぜひ、取材をさせてください」

執事と主人を交互に見て話す。

「写真と、できれば動画の許可もいただきたいのですが」

ゆっくりと一つ、人形が瞬きをする。
中学生まで緊張して返事を待ったが、グレンは意味がわからず一歩後ろに立つフォードへ視線を投げた。
何の為に取材をするのか、写真なんか撮ってどうするのか不思議なのだろうとフォードは察した。
ふっとゆるんだ表情は仕方ないなぁと甘やかすようで、優しく主人へ向けられている。

「部活動ですよ。ね?」

笑みは変わらないようで、中高生に対するそれに甘さはない。

「はい。取材して新聞を作る事を活動の目的としているので、撮影した素材の売買はしてません」

譲る場合、基本的には校内と部が認めた人物に限っていて、二次配布厳禁。
焼き増しの代金、プリントアウトなどの際に使う物の代金を負担するだけなので、それ以上の金銭のやり取りは発生しない。
その説明を聞いたフォードは納得して了承した。
新聞部を訪ねる生徒や、紹介で許可された人は熱心なファンなので、ルールを守ってくれることが多いと聞けば、フォードも気分がいい。
フォードが認めたので、グレンも納得した。

カメラを構え、パソコンに向かう高校生達。
まず初めに改めて名前を聞かれ、グレンは愛想の欠片も無い返答をした。

「グレン・アプルシード」

感情の見えない表情と声色が緊張感を生むが、質問に答えてくれるので不機嫌ではなさそうだ。

「十八歳」

答える度にパソコンを打ってるので、グレンはそれがメモなのだと理解した。
身長、体重、出身の次は家族についてだった。
答えに詰まり数拍の沈黙が流れ、少女達にピリッと緊張がはしる。
彼には、親に見捨てられたという噂があったから。

「……家族は、両親が居る。よく知らないけど。親戚も居るんだろうが、それも知らない」

語る様子に何ら変化は無い。

「顔ももう覚えてないし、どんな声だったかも忘れた」

重くつらい事実を、何の感慨も無く機械的に答える。

「いくつなのかも知らないし……」

そういえば何してる人だっけ?と執事に聞くグレンは、いっそ冷たく映った。

「元を辿れば、一族は砂漠出身なのですよ。貿易で成功していくつか家を所有していたのもあり、次第に都会へ移ったそうです」

へぇ。と、中高生と同じタイミングでグレンも知る。

「今暮らしているこちらの屋敷も、古くは一族のものだったそうです。人手に渡り、長年放置されていたものをまた買い戻したというかたちになります」

当人よりも少女の方が熱心で、感動が大きい。

「では、グレン様は何故こちらへ?病気療養という噂もありますが」

グレンは少し考えて、フォードに判断を煽った。
目配せで察したフォードは苦笑して、本人に任せた。

「グレン様のよろしいように」

そこで初めてふぅっと静かに息を吐き出した姿は、やっと感情が滲んでみえた。
ことんと首を傾げた仕草は幼く、さらりと流れる黒髪は輝く。

「何だったっけ。……ヴァンパイア様?」

ぽろっと呼び間違えたあだ名を思い出して問うと、インタビュアーは頬を赤らめた。

「それだよ、理由」
「え?」

少女達は何も本気でヴァンパイアを信じてそう呼んでいないだろうし、悪魔だ呪いだなんて事も信じないだろう。
だからこそ冗談の様に呼べる。

「両親が、息子を呪われたヴァンパイアだと思ったから、こっちに厄介払いされた。それまではずっと隔離されていた。フォードはその頃から世話をしてくれている」

そんな過去が……と心を痛め、お二人にそんな絆が……と胸を熱くする少女達。
そこからフォードも取材の餌食になったが、そんな立場ではないからと微笑みでかわしはぐらかした。

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