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Desert Oasis Vampire

少女は、通学路を走っていた。
朗報と称した罠を抱えて。

例え彼女に意図が透けて見えても、一か八か。
グレンの為にやるとリサは決めていた。


挨拶をするなり、リサは友人達を引っ張っていって、人気の無い場所でこっそりと告げた。

「きゃあ――――!」

爆発する悲鳴。

「ウソ!ウソでしょ!?」

信じられない!と感激する彼女達を見て、リサは良心が痛んだ。
彼女達がこんなに興奮して歓喜する事を、リサは一人だけ何度もしてきたのだ。

しぃっと口元で指を立てると、皆同じ様に仕草を真似たり、口を塞いで声を殺した。

「本当に!?本当に“ヴァンパイア様”と会えるの!?」

その人の名を知っても、ほとんどの生徒はいまだ呼び名を変えない。
恐れ多いなど理由は様々だが、それが彼との距離を表している。
自らの目で見ても尚、現実味の無い謎めいた存在。

不気味で恐ろしい噂があるのに、惹きつけられる美しい相貌。
それが甘い罠の様で、安易に近付いてはいけないとわかってるのに、やめられない。
呪われたヴァンパイアの魔力に捕らわれてしまっているのだ。

以前出没した教会近くで遭遇してお話することができたという話を、舞い上がる友人達は頭から信じた。
それで友人達も含めたお茶会の席に来てくれるという約束を貰ったというシナリオは、フォードが考えたものだ。
誰かの家へ招くと不公平になって争いが生まれるから。とのリサの要望で、場所はリサ達がよく行くカフェに決まった。
日時を一方的に指定するのは「いつなら行ってやる」と横柄な印象にも見え、相手方にも失礼になってしまうとフォードは心配したが、やりとりはできないことになっているし、言われればそんなの気にせず絶対駆けつけると断言したのでそうなった。

リサが言わずとも、友人達が当然行くでしょ!?とクレアを誘ってくれた。

「でも、私が行っていいのか……」

クレアは、ヴァンパイア様と会った時の失態を気にしていた。

「何言ってるの。クレアだって友達でしょ!?」
「大丈夫だって!こんな機会もう無いよ!?」

具合が悪くて保健室に行っていたクレアとヴァンパイア様が遭遇してしまった。
倒れたヴァンパイア様を前にして混乱してしまい、何もできなかった事を悔い、申し訳無く感じている。
その言い分に、リサは騙された振りをした。

「そうよ。だからクレアも、ねっ?」

それがリサの役目だからだ。
グレンを餌にクレアを誘い出して、アイラにその正体を暴かせる。
計画を聞いたのは、グレンが目覚めたばかりの時だった。
それも、グレンの口から。


時は、グレンが目覚めた直後へ遡る。

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あきゅろす。
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