極道うさぎに恵みあれ 3 しばらくして、いっちゃんから電話が鳴り、受けると同時にユッキーが校門を指した。 もしかしてあの人?と言った先には、スーツ姿の長身があった。 帰っていく生徒達の注目を浴びるいっちゃんは軽く手を振って微笑む。 校門に向かいながら、ユッキーは格好良過ぎだと溜息をついた。 「お帰り、恵」 「ただいま」 人前で頭を撫でられるのは恥ずかしいけれど、やっぱり嬉しさの方が上回る。 「そちらは、お友達?」 「そう。ユッキー」 「堀之内政幸です。見た目チャラいですけど、悪い事はしてないんで!むしろ俺がめぐちゃんを悪い事から守ります!」 興奮気味な宣言にいっちゃんはありがとう、と言って笑顔を見せたけれど、その後に特別な笑みが俺に向けられた。 「一緒にご飯を食べてるって言ってた子?」 頷くと、これからも仲良くしてやってくれなんてユッキーに挨拶をして、何だか気恥ずかしくなった。 きっと忙しいのに時間を割いて来てくれたのだろう。 運転手の鷹見さんはそこら辺を適当に走って時間を作ってくれているようだった。 その限られた中で過ごす。 呼ばれて隣を見上げると、そこには優しい笑みがある。 「大袈裟じゃなく、俺は恵が一番大切だと思ってる」 真っ直ぐに下ろされる眼差しが、一人じゃないと伝えようとしていた。 「恵っていう存在が無ければ、他に何の理由があって生きているかわからないくらいだ」 言葉が胸を締め付ける。 「組の皆には悪いが、どっちを取れと言われたら俺は恵を取る。絶対にだ」 いっちゃんが気休めに嘘をつかない事を知っている。 嘘が嫌いだと知っている。 だからこの真剣な思いが、泣きそうなくらいに、心の底から嬉しすぎた。 「恵は頑張り屋だから、一人で頑張ろうとするけど。もっと甘えておいで。俺も恵と会えないのが寂しいから」 目の前の苦笑が滲んでいく。 大好きって何回言っても足りないくらい、いっちゃんが大好き。 いっちゃんがお兄ちゃんでよかった。 いっちゃんの弟でよかった。 泣くのを一生懸命我慢したのに、ほんの一筋だけ頬に伝った。 [*前へ][次へ#] [戻る] |