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シリーズ・短篇

ミオスはテトと二人きりになると、マヘスの様に膝に乗せて撫でてくれた。
大きな手で頭を撫で、「お前は本当に小さいのだな」と小作りなテトののどを撫でたり、手や腕を擦ったり。
赤ん坊の様に腕の中に抱っこして、頬や首筋、胸元をすりすりと頬擦りされるとたてがみがくすぐったくて笑ってしまう。
けれどそうされるのは嬉しくて、とても大好きだった。

マヘスのどっしりと構えた大きな愛情は安心感があったが、ミオスの眼差しはくすぐったくてそわそわした。
なのにもっと可愛がってほしくなる。
甘えたくなる。
不思議な愛情だった。

ある日はまた抱っこされてすりすりされていると、お尻の尻尾の付け根あたりを撫でられた。
テトはびくびくと尻尾を揺らし、きゅっと弓なりに背を反らした。
そうすると更にそこを押し付けるかたちになってしまい、触られているだけで鼓動が早くなるのを感じた。
テトが綺麗な目を潤ませて見上げると、ミオスは何も言わず探るようにテトを見ていた。
手が触れているだけでは物足りなくなったテトは、もう一度今の感覚を味わいたくてお尻を擦り付けた。
これが気持ちいい行為だと確認したテトは、ミオスにもっとしてほしいと思った。
黙ったままのミオスを見つめて口を開いたけれど、無意識に腰を揺らしてしまい言葉にならない。
その瞬間、テトのあごから頬をべろんとミオスが舐めた。

「あっ、ん…!」

同時にミオスがお尻を撫でたから、不意に上擦った声が漏れた。

ミオスはもう一度テトを膝の上へ、今度は自分の方へ向けて座らせた。
何も言わず見つめあっただけなのに、今している行為は二人だけで秘めておくべき行為なのだとわかった。
いけない事というのではなく。
誰かに話す必要のない。二人だけに通じる、内緒のやり取り。
それはテトが前から感じていたそわそわした気持ちを大きく膨らませたような感覚がした。
ざわざわと胸の中が騒がしくなり、落ち着かない。

ミオスが示してくれる愛情の表現。
その秘密の行為が、テトはすぐに大好きになった。

「テト。わたしとこういう事をしたというのは……」
「うん。わかってるよ」

ミオスは最初に膝に乗せてただ頭を撫でてくれた時から、テトにこの事は他人に言わないようにと話した。
人前では偉大なる王者らしく振る舞わねばならないミオスが、こんなにテトに目尻を下げているなんて恥ずかしいからだ、と。
テトは自分の身分が低いからミオスがそんな事を言うんだとは考えなかった。
ミオスから一度も、少しも侮蔑なんて類いのものを感じたことがなかったからだ。
だから素直に、その言葉通りの意味で理解した。
今のもその延長だとテトは考えている。

テトは二人きりの時だけに漂うこの親密な雰囲気も、行為で示される表現も好きだった。
そしてそれを他人に言いふらすものではないと感じていたから、口外はしなかった。
これは。このミオスとの時間は、二人の間にある愛情によって起きる。
マヘスとの絆や関係をいちいち他人に言いふらして知らしめようとしないように、テトにとってはミオスとの事も口外するものではない。
それだけだ。

徒人の社会では違うそうだが、獣人の社会では同性愛行為自体はそう批難されるものではない。
一生を添い遂げるパートナーに同性を選ぶ者も昔から歴史的に数%の確率で一定数存在してきたし、獣人社会ではそれを後ろめたく思いひた隠しにするのを迫られる差別が存在しない。

寿命が短い徒人の間では種を存続させるためにどうしても男女間で子供をつくることを求められるといわれる。
だから子をなさない同性愛は罪とされるのだと。

ミオスの場合親一人子一人なので本来ならば同性婚は反対されるところだが、親族が居るのでその心配は無さそうだった。
徒人は自分のコピーを残そうと考えるから同性愛を断罪するのだというが、獣人の場合は親族という大きなグループで考える。
もしくはライオンや猫というもっと大きなグループで種を存続させることを考えるので寛容なのだ。
それよりも獣人は身分の方がうるさい。

獣人であるがゆえに許される事もあるが、許されない事もあるという訳だ。

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