Lovely Prince
3
寮に帰ってくると、入口ですぐに管理人のおじさんに京が呼び止められた。
電話がかかってきていて、放送で呼び出したけれど来なくて困っていたところだったらしい。
「ご家族から」
「どうも」
受話器を受け取って話し始める隣で待っていると暇で、京にちょっかいを出したくなる。
普段遊ばれているだけに、こういう時にこそ逆襲すべきだと企む。
そのくらいきっと許されるんじゃないか。
そんな事を考えているのも知らないで、京はペンとメモを借りて何か書き留めている。
「週末だけでいいんだよな?それ以上は居られないからな」
脇腹を突っついたら、笑いながら額を小突かれた。
「後から無理って言われたって二、三日が限界だからな!それ以上は断る!」
一度里久と目を合わせたら何か企んでいる事をわかったらしく、笑いを堪えている。
京のシャツを引っ張り上げると筋肉質な腹が見えて、里久も誠もそばで必死に声を抑えて笑う。
「俺を頼りにすんなよ!?」
ぴしりと手を叩かれて渋々引っ込める。
と、腕を掴まれたのと同時に足を引っかけて引き寄せられた。
そしてまんまと捕獲されてしまった。
がっちりと背後から抱き込まれて抵抗も出来ない。
片手だけで両腕を押さえ込まれて諦めたのをいいことに、今度は京の仕返しが始まる。
受話器を肩に挟み、自由になった手でシャツをたくしあげられて焦る。
電話中だから声は出せないし、だからといって力でも抵抗出来ない。
最早存分に笑うべく距離をとり、腹を抱えて笑っている誠と里久。
「うぅー…っ」
腹が出されてしまい、何とか隠したくても相手は片手だというのにちっとも動かない。
それどころか徐々にシャツは上げられていて、続々と帰ってきている人達にギョッとされている。
「じゃあな。……だーれが電話中に邪魔してんだー!?」
「ごめんっ、ごめんなさいごめんなさい!もうしないからぁ!」
電話が終わって謝ってから何とか解放されたが、誠と里久は笑いすぎて涙を拭っている。
京もブレザーの胸ポケットにメモを突っ込みながら笑った。
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