13.下手くそなキス(土方×銀八)
「やんのやんねーのかはっきりしろよな、お前男だろ」
目の前で固まっている男に殊更だるそうな声でそう告げる。
「あ、いやその・・・本当にいいのか」
見るからに焦っている。
おもしれー。
「お前から言ったんだろうが。キスしたいって」
「それはその、心の声がつい出たっていうか」
「だからいいって言ってんだろうが。ほれ」
俺の前に突っ立ったままで手を握ったり開いたりしながらしどろもどろの教え子に、椅子に座ったままの俺は目をつむって顔を上げる。
どう見てもこれは教育者としては間違っている。
そんなの分かっている。
そう、悪いのは、俺。
肩に、ぎこちなくだがてがかかる。
やっとくるか?
ガチッッ
「んっ、いってえええっ」
キスどころかぶつかっただけだろうっていう衝撃のふれあい。
「いてーだろ!」
ゴンっと足を蹴れば、しっぽをたらしてしゅんとした大型犬のような土方。
その口元にはどちらのものかわからない血が少し付いている。
まったく。
頭を腕で引き寄せ、そこをべろりと舐めてやる。
だーかーら、びくつくなってえの。
「今度はうまくしろよ」
とたんに輝く黒い澄んだ瞳。
「してもいいのか」
「いーよ。ただし俺以外で練習して上手くなったとかだったらぶっ飛ばす」
矛盾の言葉
矛盾の態度
矛盾だらけの
大人のせいいっぱいの照れ隠し
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