14.思い出のキス(銀時×高杉チビ時代) 唇に指先をやる。 少し不安な時の俺の癖。 心を落ち着ける時の一種のおまじない。 「たかすぎっ!たかすぎってば!」 「やっだって!こえーし!」 「ったく、なんだよあんな犬くれぇ怖くないって」 「…だってこの間もうすこしで噛まれそうになった…」 「今日は大丈夫だっつうの。俺もいるし」 「絶対先ににげんだろうが」 「しねぇって。約束する」 「嘘だ」 「本当に!早くしねぇと松陽先生の忘れ物届けらんねぇぞ!先生困んだろうが。お前待っとけよ、俺一人でいってくっから」 「ふぇ…ぎ、ぎんとき、」 「うわあ、な、なくなよ、落ち着けって。もう」 ふにゆん 「なんだ今の」 「とっておきの落ち着くまじない。だれにも秘密だかんな。お前だけだからな」 「おれ、だけ」 「ほら行くぞ」 引かれる力強くてあたたかい手。 唇に触れた柔らかい感触。 今でも思い出す。 たとえそれが人斬りをする前であろうとも。 指を唇から離し、一呼吸。 「いくぞ」 思い出は彼方の光の中。 でもいつもそばにある。 [*前へ][次へ#] [戻る] |