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「ヅラ、お前ここで何してんの」
「ヅラではない、桂だと何度言わせるのだ銀時。何って見てわからんのか、ケーキを売っている」
「んなもん見りゃわかるわ!!お前は俺と約束してたんだろうが!なのになんでこんなところでケーキ売ってんだっつうの!」
「あれ、そうだっけ」
「‥‥‥」
「まあ、お前の用事なぞどうせくだらぬことだろう。知ってるか?今日はケーキを売るだけでいつもより時給が格段と高いのだぞ」
「ほーう、そりゃあよかったなー。俺よりバイトが大事っつうわけだ。なるほどな、わかったわかった。俺、もう帰るわ」
「ちょっと待て銀時」
「ああ?今更謝っても遅いぞ」
「ん?何故俺が謝らねばならんのだ。それより帰るならリーダーに土産にケーキでも買っていかないか?今ならなんと30%引きだぞ」
「‥‥‥いらねぇよ。じゃあな」
「おい、銀時ッ!」
呼び止めはしたが、あっという間に雑踏の中へと消えて行ってしまった。
「全くカルシウムが足りないのではないか?」
雑踏に紛れる瞬間、傷付いたような顔に見えたのは気のせいか。
気にはなるが‥‥‥まあ、今は仕事仕事。
ケーキを売りさばくまでは仕事も終わらない。
「クリスマスケーキいかがですかぁー、今ならお得に販売してまあす!」
道行く人達に声をかける。
‥‥‥‥あれ、そういえば銀時との約束ってなんだっけ。
なんか言ってたような。
まあいい、仕事が終わったら帰りにでも寄ってみるか。
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「ごめんくださーい。桂ですー、銀時ー、リーダー、誰もいないんですかあ」
無事にケーキも全て売り切り、こうして頑張って褒美+αのクリスマスケーキまで貰い万事屋まで来たというのに、返答はない。
「銀時のやつ、どこにいったのだ」
軽くため息をつくと、白い息となって吐き出される。
バイトの帰り際、ケーキ屋の店長に言われた言葉がどうにも気になって仕方がない。
『いやあ、寒いのに遅くまで頑張ってくれてありがとうね。これ、よかったら持って帰って恋人とでも一緒に食べてよ』
ポン、とケーキの入った箱を渡される。
『店長。なぜ恋人とケーキを食べるのだ?クリスマスとは家族で三太が来るのを感謝しながらケーキを食べる、いわば子供のお祭りみたいなものではないのかな?』
『なあに言ってんのぉ、桂さん。今、この江戸じゃあそんなこと言ってんの桂さんだけだよ?クリスマスっていやあさ、愛するもの同士がシャンパンで乾杯してケーキと旨い料理食べて、愛を確かめ合う大事な年末の一大行事になってんのよ。勿論、子供達のいる家庭は従来どうりだけどね。だからケーキも大きい家族用のケーキより小さめのちょっと小洒落たケーキのほうが売れてたっしょ?』
そういわれてみれば、確かにカップルで小さめのケーキを買っていく方が多かった気がする。
『そうなんですか』
『それで?桂さんも付き合ってる人いるんでしょ?』
『はあ‥‥まあ』
『んだったら今すぐそれ持って彼女んとこ行ってあげな!きっと寂しい顔して待ってんよ』
『寂しい顔』
『そうそう、後の片付けはいいからそれ持って早く行きな』
『ありがとうございます、店長』
頭を下げ、万事屋に直行することにした。そうして今に至るわけだが、そんな行事だとは知らなかったと謝りたくとも相手がいないのではなんとも出来ない。
‥‥‥確かに銀時は寂しい顔をしている様に見えた。あれは、気のせいではなかったのだ。
「銀時‥‥」
呟いてはみても、返事など帰ってくるはずも無かった。
それから銀時のいそうなところをあちこち捜したが結局会えないまま。
わかったことと言えば、新八くんの家に行ったときにリーダーが言ってたこと。
『銀ちゃんなら大事な用事があるって出かけたアルよ。何だか今日は朝からウキウキしてて気持ち悪かったアル』
それだけ聞けば、どれだけ自分が手酷い言葉を投げつけたのがよく分かった。
だからこうして捜しまわったのだがとうとう見つけることは出来なかった。
何度目かの溜息をつく。
帰り道の足が重く、のろのろとあと少しの距離まで来た時。
「おせーよ」
銀時の声がした。
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