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命ーミコトー
8
「じゃあ、榊。ここで少し整理してみようか。
ミコトの巫女が最後に命をかけて封印した妖怪がその瑠璃という妖狐だとしよう。
で、そのミコトの巫女を見取ったのが夜琴。
夜琴はミコトの巫女を甦らしたいために、結果的にはミコトの巫女を殺したってことになる瑠璃と手を組んでいるのか?」

 私はうーん、と唸った。何だかごちゃごちゃしすぎてよく分からないのだ。
それに、全て矛盾しているような気がする。

「ミコトの巫女と夜琴は愛し合ってたんだよね。瑠璃さんはミコトの巫女に恨みがあった。
でも、それで簡単に事を進めることが出来たのかな?
だって、陽さんも光さんも傍についてあるわけだし、ミコトの巫女をどうして守れなかったの?」
「どうやら…俺達にはまだまだ知らないことがたくさんありそうだな。」

 私たちは大きなため息をついた。
何だかヒントが一つくらいしかないクロスワードでも解いているような気分だ。

「あー、ダメだ。全然分からない。」
「まあ、本人に聞いてみるのが一番だろうな。」
「本人?」
「新藤先生のバックについている人物。」
「それって…。」

 その時、はなれのチャイムがなった。
二人で玄関に行って、蓮見は外にいる人物を覗く。
そして、蓮見はのどを鳴らして笑った。

「どうやら、ご本人自ら来てくれたようだぞ?」
「え…。」
「新藤先生のお出ましだ。」
「蓮見!どうするの?」

 私は少しあせって蓮見の腕にしがみついた。蓮見はポンポンと私の手を叩いた。

「大丈夫だ。心配するな。俺がうまくやって瑠璃も出させるから。」
「でも…。」
「新藤先生と瑠璃の今の標的は俺だ。今榊もいるとややこしくなるし、危険だろ。お前は帰ってろ。」

 その言葉に私は首を横に振った。そんな危険な状況に蓮見だけを置いていけない。
それに、もし蓮見も操られてしまったらと考えると…。

「榊、俺を信じろ。」

 蓮見は私の肩を掴んでまっすぐじっと見つめて言った。
私は首を縦に振るしかなかった。

「良い子だ。向こうにもう一つ外に出られる扉があるから、お前はそこから出ろ。終わったらちゃんと電話するから。」
「蓮見…。」
「さあ、行け。」

 蓮見は軽く私の背中を押す。
私は最後に振り返って蓮見の顔をじっと見つめた。脳裏に焼き付けるように。

「蓮見…約束して。」
「何だ?」
「私を…忘れないで。」

 私がそういうと、蓮見はバカ、と軽く笑い私の頭を叩いた。

「大丈夫だ、俺を信じろ。」

 そう言って微笑んだ蓮見の顔を見てから、私は後ろ髪をひかれる思いで蓮見の家を後にした。
だけど一度も振り返らなかった。
いや、振り返れなかった。怖かったのだ。
蓮見の微笑みが頭の中によぎる。

 蓮見が信じろ、と言ったんだもの。きっと、大丈夫。大丈夫だよね?や

 家に帰ってから私はずっと携帯を見つめ、蓮見からの連絡を待っていた。
しかしとうとうその夜、蓮見からの連絡は無かった。


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あきゅろす。
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