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・14/03/04 裏通り encounter:エリシュカ


エリシュカ・ヅー・ディヴィシュ。ティヴィシュ商会の看板娘さんだ。

宵闇の眷属さんで鮮血の支配者な吸血鬼さんの末裔さんなのはちょっとわからなかったけれど、そう、ディヴィシュ商会。その名前はよく知っている。

偶然にも遭遇したのは、自警団が私とは別に捜査していた一件でもあるイルミレース商会の摘発とそれに携わる構成員の洗い出しのその真っ只中、貿易繋がりでペティットにも及んでいた事柄、その逃げ出した用心棒の捕縛に掛かろうとしていた団員。即座に目標を切り替えて追っ掛けたんだけど、身体能力として明らかに優っているにも関わらず、魔法による幾度とない妨害に阻まれて。

地面を凍らせた辺りまでは良かったんだけどね。破壊した木箱に氷の矢を紛れさせた時は、流石に気付けずに右腕に突き刺さった。その氷の矢が。痛かった。

だけど。その先に居たのが、エリシュカさんで。

迎撃、氷柱を広範囲に足元から打ち出す魔術を察知して、それをへし折り投擲し的確に撃ち抜く技術。成程、ただの看板娘で収まらない、と見れるかな。
その一方で貿易商の娘として確かにその業界に精通してる印象も。イルミレース商会は南のリザードリゾートを拠点としている商会、摘発と、そう、モルンニアとも協定がある程度存在したから、影響は少なからず。確かイルミレースは違法な薬品の流通、だったっけかな、悪い噂は前々から。ディヴィシュ商会は酒類で、大きな干渉は無いのが幸いか。

花瓶、そう。花瓶は沢山買ってたんだ。あの時のお金は、全て私の賞金に賭けていて、けれど少しだけ。花を集めていて。赤い花。あの時はそれが必要だったから。
呪いに抗うのが、それしかなかったから。綺麗な花瓶、面白い花瓶。興味を抱いたものは、沢山。いろんな民芸品があった事を、覚えている。見る機会は、また、あるのかな。

血。エリシュカさんが欲してるのはそれであって、ちょっと、吸われた?でも傷は塞がってて。不思議だ。止血する事も出来るのはちょっと意外ではあったけど。なんか、不思議な感じ。ワインの様な、か。私もちょっと頂いたけれど、相変わらず鉄分の味しか分からなかった。


それにしても、コウモリさんの真似は可愛かったな。思わず笑っちゃった。


思い切り、か。吹っ切れている、邪念がない、他の事柄に見向きをしない。それは、とても信念に似ている事柄だと、思う。
私は迷っているんだろう。何度もこの疑念を提起した覚えがある。猛虎隊と、第六捜査隊。どちらも、止むを得ない場合のみ、ではある。だが、明確な差異はあるだろう。その限度、だ。

その見極めは、甘えの差分だろうか。市民が危険となったら即座に、殺す。絶対に悪を殺すというサリアさんは、脱退した。危険となったら、の見極め。そんなものは必要としない。そんな、隙を見せるからこそ、危険な目にあう。天秤は絶対だ。犯罪者と市民の、天秤。

けれど私は善人ではない。リザルグは、私を助けてくれた師は言っていたな。積み重ね方を、考えろ、と。消える事など無い、ただ、積み重なるんだ。
そんな中で、私は生かされた。そんな、罪人だとしても助けられた。それは、第六捜査隊の様な人達のおかげで。もしかしたら、私の様にいつかは、誰かに、手を差し延べられるのかもしれない、と。

それは、淡くて。

あまりにも儚過ぎる希望だ。

神父さまは言っていた。そう、ラクリモーサのように、と。その信念が揺らぐ時、新しい道を、見出す。

殺さなければならない、生かしてはならない、そんな脅迫概念じみた、信念。

それらを揺らがせる力。基礎なんか作っても、直ぐに喪われる、それはエリシュカさんの言葉。
結論に、物事は好き嫌いで決まる。私が好きか、嫌いか。今、私は猛虎隊が嫌いか、といえば否だろう。その理由は、まだ分からない。妥協、でもないんだ。ここじゃなければ、いけないような。そんな。


幸せの概念は分からないな。触れない手の暖かさは分からない。そしてそのまま死ぬか、殺されるか。

だけど、手を差し伸べてくれる様な人達が。



いいや、だとして。


この場所に身を置いているからこそ、見える風景もある筈なんだろう。

判断、見極め、見定めと、引き金。


まずは、報告書。よし、今日は一気に書き上げるぞー!明日もまたお仕事だ。

頑張ろう。多分、きっと。見えてくる筈だよ。




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あきゅろす。
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