[携帯モード] [URL送信]
・13/04/01 自警団詰め所 title[嘘の日]
今日が母さんの命日だった。そしてあの嘘から全てが始まったのを、まだ私は覚えている。全ての真相が明らかになった、私が漸く自分の記憶を認めたのは、一年前の出来事だったけれども。

母さんの愛に向き直らせてくれたのは、神父さまだった。親身になって聞いてくれて、殺そうとしたのにその刃を受け止めてくれて。そして、教えてくれたんだ。私の言葉を掬い上げて、そしてあの嘘は愛が故の言葉だったんだって。

娘への言葉。最後に残した、些細な言葉。たった一つの花の色。目の見えない母さんの嘘は私を悩ませ続け、人を殺める理由と変わり、そして呪いを紛れさせた。あの時の全ての真相を知っているのは神父さまだけ、それで構いやしなかった。

私の罪は、人を殺めた事だけではない。その嘘を、最後の言葉を嘘としてしまう事。天国から見守っているなんて認めない、神の存在だって、全て否定してやる。死んだら御仕舞いだ。墓参りなんて生者の為の儀式でしかなく、何も言葉は届かない。無意味に過ぎる愚かさで、神を崇めるのもそれに限り無く等しいと。あの時は神父さまの全てを否定してたっけ。嫌いじゃなかったけれど、神を見る、神に語る事だけはどうにも、納得が出来なくて。

でも、今なら分かるんだ。助けてくれた友達が居てさ。もう信じられる様になったんだよ。自分が助かったからこそ愛を受け入れるなんて都合の良い想い、けれどこの想いを私は否定出来ないんだ。

沢山の想いを知っている。沢山の想いに気付けてる。想いはちゃんと届いてるよ。例え表面上の嘘だとしても。それは、神父さまに教わった事だから。

でも嘘の日だから真逆の意味では伝えたくない言葉だ。それは赤禍ツの時に言ってるし。だから率直に。こういう日でも変わらないよ。


愛してるよ、セシリア。


[↓old][new↑]
[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!