・11/05/29 シエロ武器工房 encounter:ハンス/可憐
刃物なら何でも良かった訳ではない。けれど何処にでもあるような包丁で最初は行っていた程だ。ただ鋭ければ、痛みを与えられれば、死を与えられれば良い。そこに強度や鋭利さや長さ等の効率を貼り付ける事を望むだけ。
左腰に挿した二本のナイフも大した金を掛けていない。もっと、もっと鋭ければあのセシリアの右手の奥の胸を貫けたのだろうか。もしくはもっと鋭ければダストマウンテンでの彼女の腕を二度と動かせぬようにすら出来たのだろうか。
ナイフはそう使い慣れていた訳でもなく。慣れていない事はするものではない。師に学んだのは相当な前だ。あまり良い感覚はしないからこそ、簡単に銃で済ませていたのはあるが。
死を与える媒体。赤き花を咲かす媒体でしかない。私にとっての武器は。
それでもジャックに言った事は間違いではない。武器は古来から大切なものを守るためのものだと。それは今でも間違いではないと信じている。私は私を守るために他人を殺すのだ。そして何れは、私から他人を守るために。
鉄を打ち伸ばし、その鉄を研ぎ澄まし刃とする者達は選択をする事が出来ない。その造られた刃を扱う人達の、刃の使い道を。
各々の武器の、各々の使い道。
彼は信じてくれるのだろうか。それとも疑っているのだろうか。無関心でいる様には、見えなかった。だからこそ申し訳無い気もするが。
私は全ての信頼に背く。今まで触れ合ってきた者の全てに。いや、元より咎を追う者達になら真実しか有り得ないか。
嘘を嘘で重ね続け、嘘でしか存在する事が出来ない。元より私の始まりは嘘から生まれた事による。
どちらも私だ。表も裏もない。
分かりやすい様に他人が区別しているだけだ。だとしても、まだ生きれるなら。
鍛冶屋喫茶、それが出来たなら通ってみようかな。あれは、喫茶店として出しても問題はないだろうね。
またいつか。
右腰に挿したこの刃は何の為に振るわれるのか。その答えが望まれたものだとは信じれはしない。
けれど武器は、何かを守る為に。その為に私はこの刃を。
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