■青天の霹靂
12
次の日、目が覚めると…頭が重ーい、痛ーい。しまった…二日酔いか…。
「やばい、今何時?!」
私はそう叫んで飛び起きた。その途端、頭に激痛が走る。痛ーい。
「六時だよ。」
ふいにそう言う男の人の声が聞こえる。声のした方をよく見ると、商売敵がそこにいた。
何故?!
そしてよく周りを見渡すと、そこは全然知らない場所。
ここはどこ?なぜこんな所に私はいるの?!
「あのー、私いったい昨日何を…。」
恐る恐る尋ねてみる。居酒屋で、くだまいてたとこまでは覚えてるんだが…。
「帰る時点で、すでに前後不覚で、俺、君の家知らないし。とりあえず、俺の車でここに。」
ここって…ここどこよ。
「ラブホテル。」
?!
「大丈夫だって、何にもなかったから。君は着いた途端眠っちゃったし、俺は仕方ないからソファーで眠ったし。」
商売敵…この状況でそう呼ぶのは、あまりにも失礼か。長町さんはそう言って大笑いする。
「…すいません、私、失礼な事、言いませんでしたか?」
酔って前後不覚になるくらいだ。何を言っててもおかしくはない。
「まぁね。まぁ、でもその前にシャワーでも浴びてくれば?スッキリするよ。」
長町さんにそう言われ、とりあえず私はシャワーを浴びることにした。
わぁー、ほんと。生き返るような気がする。
私は頭からちょっと熱めのシャワーを浴びた。
でも、長町さんって、ちょっといい奴じゃん。
私が逆の立場だったら、下手すりゃそのまま捨てて帰ったかも。だって嫌いだったし。
私はちょっとご機嫌でバスルームから出た。
「あー、サッパリしたっ。」
思わずそう声が出ると、目の前では長町さんがくすくす笑ってる。
この人、落ち着いてよく見ると、ちょっと男前じゃん、背も高いし。
「青木さん、君、仕事何時からなの?」
「んー、今日は十時から。」
知らず知らずのうちに、普通の会話してる。今まであんなに険悪だったのに。
「そう。俺は今日休みで予定無いし、今の時間はまだ六時半。どうする?」
どうするって…?
長町さんはちょっと不敵な笑みを浮かべて言う。
「一度家に帰るか、それとも、仕事の時間まで俺につきあうか。心配しなくても、ちゃんとスタンドまで送ってあげるよ。」
なんなんだろう、この長町さんの変わりようは。
「昨日の君の話、聞いてると面白くってさ。」
そう言って長町さんは笑うが、本当に、昨日私は何を言ったんだ?
「ほとんど会社の愚痴だったんだけどね。会社に殺されるとか、常務のバカヤローとか。あ、でも、一番おもしろかったのは、このまま一生独身のまま働かされるんだー、かな。」
「えー?そんな事まで言ってたのー?」
私は顔を真っ赤にして叫んだ。酔っていたとはいえ、とんでもない事を口走ってる。
そしてそのまま、一時間ばかり楽しく話しこんでいた。
―ピリピリピリ―
私のカバンの中から、携帯の鳴る音が聞こえてくる。
「ちょっとごめん。」
私は長町さんにそう言って、慌てて電話に出る。
「もしもし。」
『もしもし?おはよーございます、村西です。主任、なんで車が会社にあるんですか?』
花緒だ。そんなことくらいで、電話すんなよー。
「昨日、飲みに行ったから、置いて帰ったの。で、用はそれだけ?」
どうも、それだけらしい。ほんとにもう…。
「会社から?」
長町さんが笑いながら言う。
「そう。しょっちゅうかけて来るんだもん。携帯持ってたら、365日、24時間仕事してるみたい。」
私がふぅ、と溜息をついて言うと、長町さんは、
「じゃあさ、電源切っとけよ。」
そう言って私の目の前まで来て、手の中の電話を取り上げる。そして電源を切った。
私は何が起こってるのか分からなかった。
長町さんは私の携帯をテーブルの上に置き、私の手を引いてベッドの方へ移動する。そして次の瞬間、私はベッドの上にあお向けで倒れていた。
「な、何?」
私がうろたえると、長町さんは真顔で言う。
「ごめん、我慢できない。嫌なら本気で抵抗しろよ。」
そして私の上に覆いかぶさってきた。
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