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■青天の霹靂
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「で、引きうけちゃったんですか。主任、頼まれると断るの下手だからなー。」

 仕事を終え、バイトの有馬とすぐ近くの居酒屋へ夕食…というか、憂さ晴らしにちょっと一杯…。

「でも、ま、いいんじゃないっすか?主任が所長になろーが、西本所長が辞めよーが。実際、ほっとんど、今と変わんないし。」

 有馬はそう言ってケラケラ笑う。こいつは相変わらず、ずけずけ言う奴だ。

 私は残り少なくなった梅チューハイを一気に飲んで、ジョッキを置いた。
 次はノンアルコールにしとこう。そう思って店員を呼ぼうとした。

「いらっしゃーい。」

 カラカラと入り口が開いて、新しい客が入ってきた。そして、

「あ、有馬君!」

そういう女の子の声が聞こえる。呼ばれたのは目の前の有馬かい?

「塚本?うわぁ、久しぶりー。」

 有馬はにこにこしながら立ちあがる。なんだ有馬の知り合いかい。

「塚本も一緒にどう?」

 有馬はその女の子を誘う。

「え?でも彼女と一緒なんじゃ…。」

 女の子がそう言い終わる前に、有馬は大爆笑。

「違うって、バイト先の主任。第一、俺より八つも上だぜ。」

 そう言ってまた大笑いする。ほんとーに、失礼な奴だ!

「そう、よかった。あたしも会社の人と一緒なの。所長ー。」

 その声に呼ばれて現れたのは…。

「あっ!」

 二人ともがそう言って、またその後黙ってしまった。
 よりによって、なぜ商売敵…。

「すんません!生中一つ!」

 ノンアルコールのつもりが、アルコール。

 責任者となれば、勿論大和に負けるわけにいかなくなる。ここでSSの業績が落ちれば、間違いなく私の責任だ。
 常務だって、昼間はうまいこと言ってたけど、そうなればメチャクチャ言われるんだろうなー。前途多難…。

 私はさっき来た生ビールをぐいっと飲んだ。

 この、目の前の人さえいなければ、まだ先は明るいんだけどなー。

 多分、お酒がだいぶまわってきて、だいぶ座った目で私は、商売敵を睨んでいたのだろう。

「どうしたんだ?おたくの主任は。今日はいつにも増して、迫力があるじゃないか。」

 商売敵が嫌味たらしく、有馬に言う。
 有馬も有馬で、余計なこと、言わなくてもいいのに、

「いやね、来月から所長になるんスけど、まだ納得してないようで。いいかげん、諦めればいいのにねぇ。」

なんて調子に乗って言いやがる。このやろう。

 私はジョッキに残ったビールを一気に飲み干し、ダンッと机に置いた。

「すんません!生中一つ!」

「主任ー、もうやめといたほうがいいですよー、明日も仕事でしょー。」

 有馬が言うが、そんなの知るかい!

「これだから、酔っ払いは手におえないんだ。」

 あきれたような顔で、商売敵は言う。

「うるさい!あんたなんかに、何がわかるっていうのよ!」

 自分でも半分、何に怒ってて、何を言ってるのか分からない。
 分からないけど、無性に腹が立ってるのだ。

 それからそうとう飲んで、そうとう商売敵に絡んだけど、何を言ってたのか、何をしてたのかは全然分からない。
 途中から、商売敵は私をバカにするでもなく、黙って愚痴を聞いてくれてたような覚えがある。
 が、しかし、店を出る頃の記憶は全く無かった。


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