『魔王に就職』 勇者参上。《2》 さて、今日は暇な1日になりそう……いや、もしかして明日も明後日もか。 ナウラスのお出かけはいつも日帰りだったから、1日中いないってのは初めてだな。 大丈夫なんて言ったけど……やっぱり、ちょっと寂しいかも。 今出かけたばかりなのに、早く帰ってこないかな、なんて思ってしまう。 そして、いつになく味気ない1日が、過ぎてゆく。お茶の時間も、食事の時も、ずっと1人。何だか、ものすごく長い1日に思えた。 時間を持て余し、いつもより早めに寝床について、早めに寝てしまった。 翌日。 朝日と共に小魔物たちに起こされるいつもの朝。 朝食を食べて歯磨きして、着替えて、朝礼の時間になったらナウラスが迎えに…… ……あ、ナウラス居ないんだっけ。 こんな朝も初めてだ。 ……。 あれ? でも、朝礼は、あるんだよな? 城に残ってる魔物もいるんだし。 もちろん俺も行かないとダメだよね? ……どうするんだろう。今日はいつもナウラスがかけてくれる結界魔法ないぞ。下に行っても大丈夫なのか? まぁ、多分、大丈夫……なはずだ。今まで何もなかったし。いつもの結界魔法だって念のためなんだし。それより魔王とナウラス揃って朝礼にいないと、魔物たちが混乱して大変なことになるに違いない。 行かなきゃ。ちょっと怖いけど。 というわけで、今日は1人で、魔王の間のあるフロアに続く階段を下りる。 うわー……めちゃめちゃ緊張する。 そして、玉座に座り、司会係の魔物に後は任せた。よろしく! ……。 ……あ、違う。挨拶忘れてた。どんだけ緊張してんだよ、俺。 慌てて、頭を下げている魔物たちに向かい、スッ、と右手を一文字に切った。 すると、緊張して手に汗でもかいていたのだろうか、右手の人差し指から、指輪が抜けて、挨拶で手を振った勢いで飛んでいってしまった。 …………ギャー! やばい!! サーッと血の気が引く。 あれは俺が魔王である証の指輪だ。なくしたら一大事。というか、あれがないと最上階への階段の結界が通れず上に上がれない! 部屋に戻れない! 飛んでった指輪は、コロコロと転がり魔王の間のすみの暗がりへ消えていった。俺以外は皆、頭を下げていたため、誰も気付いていない。 拾いに行きたいが……朝礼が終わってからだな。 [*前へ][次へ#] [戻る] |