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『魔王に就職』
危険な客人《8》

「アズマ様とこちらの契約はまだあと半年以上残っています。勝手なことを言わないで下さい」

 だ、だよね。困るよ、途中で追い出されても。バンパイアのとこに再就職なのも。

「でも、もしあの卵が無事に孵化してナウラス殿のものになれば、こちらの人間魔王殿はもう必要ないでしょう? この間、例の卵を遠くから見させてもらったけど、もう結構大きくなっているようだったよ」

 え、必要ないって俺のこと? うそ、やだ、クビですか!? 最近調子のりすぎた? ……いや、てか、卵って……何?

「ふふふ……魔王殿、どうしました、そんなキョトンとして? もしかしてナウラス殿からまだ次期魔王の話は聞いていないのかな?」

 キースが俺の目を覗き込む。紅い瞳が妖しく光り、訳もわからぬまま不安な気持ちが広がる。

「次期魔王……?」

 まぁそりゃ、俺が辞めた後には次の魔王がいるんだろうけど……

「そう。竜人族に、次期魔王候補がいてね、もうじき生まれるんですよ。今はまだ卵の状態だけど」

 もう候補が決まっているんだ、知らなかった。

「ふふ……。どうやら何もご存知ないようなので簡単にお話しましょうか。
 ……魔王領地より遥か北東に、竜人族という魔物が同族のみで独立した勢力を持っているのですが、ここ十数年、族内で紛争が続いているのです。私の住み処が割と近いので、たびたび情報が入ってくるんですけどね。
 もちろん乱なので死傷者も出るんですが、可哀相なのが、産み落とされたまま親がその内乱の犠牲になってしまった卵が多いらしくて。
 そういう親のない卵はそのうち孵ることなく腐って死んでしまうのだけど、その中に特に魔力を備えた卵が1つあって、それに先代の魔王が目を付けたんです。そこで先代魔王は、乱の主力軍の大将であるセレア殿と、魔王勢力を彼に協力させる代わりに彼が勝利した暁には例の親なし卵をもらうという密約を交わした」

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あきゅろす。
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