[携帯モード] [URL送信]

〜宛メメント
右手
気が付くと、あたしは真っ白な天上を見て居た。
頭の鈍痛を堪えながら目線だけ動かすと、そこが病院だと知るまでにさほど時間は必要なかった。


腕に刺さった、得体の知れない管。
巻かれた包帯。
今すぐ引き千切ってやりたい衝動と共に、胃の辺りから込み上げてくる吐き気に苛まれる。
気持ち悪い…。


ああ、つまりは
また死ねなかったんだ。


こんな独りぼっちのあたしなんか
生きてる意味無いのに。


吐き気は貧血から来るのか、それとも先程の悪夢から来る物なのか。
大した違いは無い。
この世に生きて居る、という事実が一番の悪夢に変わりは無いのだから。


この包帯で体中をぐるぐる巻いて
ミイラの様に埋葬してくれないかしら。
あたしが体中をリストカットすれば、そうなるかしら?


皮肉な事を考えながら自分を呪う。嫌悪さえする。
何時になったら神様はあたしを幸せにしてくれると言うのだろう。


涙混じりの嗚咽すら、空虚なモノにしか感じられなくなって
夢の中のあたしの方が、どんなに良かったことか。
それでも現実に意識を戻すと、右手の平に違和感を感じた。


「…ん、?」


声のした方を見ると、黒髪の間から覗くシルバーピアス。
あたしの手を握りながら、ベッドに突っ伏して微睡んでいたであろう男が、むくりと起きる。
ユヅキだ。


「…あ。ああ…気が付いた。」


何をしているの、
と声を出そうにも、口が渇き切っていて言葉が出ない。

[←][→]
[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!