〜宛メメント 右手 気が付くと、あたしは真っ白な天上を見て居た。 頭の鈍痛を堪えながら目線だけ動かすと、そこが病院だと知るまでにさほど時間は必要なかった。 腕に刺さった、得体の知れない管。 巻かれた包帯。 今すぐ引き千切ってやりたい衝動と共に、胃の辺りから込み上げてくる吐き気に苛まれる。 気持ち悪い…。 ああ、つまりは また死ねなかったんだ。 こんな独りぼっちのあたしなんか 生きてる意味無いのに。 吐き気は貧血から来るのか、それとも先程の悪夢から来る物なのか。 大した違いは無い。 この世に生きて居る、という事実が一番の悪夢に変わりは無いのだから。 この包帯で体中をぐるぐる巻いて ミイラの様に埋葬してくれないかしら。 あたしが体中をリストカットすれば、そうなるかしら? 皮肉な事を考えながら自分を呪う。嫌悪さえする。 何時になったら神様はあたしを幸せにしてくれると言うのだろう。 涙混じりの嗚咽すら、空虚なモノにしか感じられなくなって 夢の中のあたしの方が、どんなに良かったことか。 それでも現実に意識を戻すと、右手の平に違和感を感じた。 「…ん、?」 声のした方を見ると、黒髪の間から覗くシルバーピアス。 あたしの手を握りながら、ベッドに突っ伏して微睡んでいたであろう男が、むくりと起きる。 ユヅキだ。 「…あ。ああ…気が付いた。」 何をしているの、 と声を出そうにも、口が渇き切っていて言葉が出ない。 [←][→] [戻る] |