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〜宛メメント
泣く女


「…何を考えているのかは知らないが、そんなに泣きそうな顔するなよ。」


ユヅキは静かにそう言った。
暗がりの中で紫煙を燻らせるその姿のまま、眉根が少しだけ、上がる。


張り詰めた空気の中、あたしはその言葉を理解出来ないで居た。
そして次に浮かんだのは否定だった。


泣きそう?
あたし、泣きそうな顔、している?


「別に、泣きたい訳じゃ…」


「泣けばいいじゃん。何を我慢する?」


ユヅキのその言葉は、あたしの心に深く突き刺さった。


たったそれだけの、3文字は、あたしにとってかなりの苦痛。
何故なら、あたしは「泣く女」が大嫌いだ。
幼い頃から泣く女を何時も見てきた。
何時も男に振り回されて、金を注ぎ込んで、サヨナラされれば当り散らして、泣く女を。


余りにも身近にそんな女がいた為に、あたしはあんな女には絶対になりたくない、と心に決めた高校の頃、純粋とか馬鹿正直とかそういう物を捨て去った。


泣くのは弱い訳じゃない、ってよく言う。
それが違うとも思わないけれど、じゃあ泣いた後、どうすればいい?
自分を保てなくなる事が恐ろしく感じた。

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