[携帯モード] [URL送信]

〜宛メメント
ゼファーχ
薄暗い路地裏にはカラースプレーで描かれたパンキッシュな絵文字の数々の他に、
薬中か族が荒らしたであろうコンクリートの破片が幾つも転がっている。

クレドの400CCバイク、ゼファーχはきちんと隅に置かれていた。


黒々と光沢を放つそれは
この街の寂れた漆黒の闇に住まうかの如く
威風堂々としている。


あたしはそれに堪らない孤独を感じ、
同じ匂いを覚えた。


「この単車、あんたの?」

「大丈夫。無免じゃないから」

黒蝶のタトゥーが貼ってある紫のメットをあたしに手渡す刹那、
指が触れ合ったなんて事は気にも留めずに
クレドはあたしの全身に目を走らせ、ふと思い付いたように次の言葉を発す。

「あ…そのカッコじゃ寒いっしょ?」

「え…」

気付けばバイトの衣装のまま、階段を駆け上り外へと来てしまっていた。

「ハイ。これ着てろよ」

それを見かねてなのか、今仕方まで着ていたクレドの半袖パーカを無粋にあたしの肩へかける。
クレドは黒いボーイズタンク一枚になって、
晒された腕や肩や背中の筋肉を見せ付けていた。

「夏でもバイクは寒いからな」


ゼファーχのマシン的ボディーライン。

改造されたマフラー音が漆黒に孤高と鳴り響く。

あたしはクレドの後ろにまたがり、腰に手を回す。


[←][→]
[戻る]


あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!