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月三物語
【悪夢】

 次の日――僕は涼の勤めている花屋へ向かっていた。『花屋へ行くと云うのに、花はないよな』と思いながらも気分は晴れやかだった。

 涼の居る街の最寄りの駅で場所を聞き、歩いて行ける距離だったのでゆっくり周りの商店を眺めながら向かう。

『涼、びっくりするだろうな』

 嬉しくて跳び跳ねたい位だ。おっと、せっかく涼のために生けた花が台無しになる!


 浮かれて歩いている僕の後から付けて居るヤツがいるなんて考えもせずに――

 見えてきた――『室井花店』涼の働く店が。外にいた人に涼の事を聞くと不審な顔をしながらも、呼びに行ってくれた。


 待ってる間に花を調べる。ちゃんとしてるかどうか、気付かぬ内に揺らしてしまってる……何だ? いきなり、ぶつかって来て――


 猛烈に横腹が痛い――焼けつく様だ……僕の体に誰かが、当たったまま、顔を上げた。

「三上……さん?……何故? 」

 三上さんは口を歪ませて笑った。その笑い方は見覚えがある――顔は違うけど、確かに――


「三上? ハハッ、わたしは三上なんかじゃ無いわ! わたしの本当の名は、木村よ! 」


 小夜! 分かった時には、立って居るのもやっとで膝を付き小夜を見上げる。

「探したわよ竜――あれから、わたしは少年院に入った。出所してからの生活は酷いものよ。それと云うのも、竜とあの女のせいだ! わたしの――わたしの人生を返せ!!! 」


「すみません、今来ますから。おい! どうしたんた? 」


 店の人が出てきて、小夜は逃げて行った。慌てて中に入ろうとする人を止め涼が来るまで待っていてと頼む。

「けど、君……直ぐ病院に行かないと大変なことに」

「僕は大丈夫です。だから、お願い……します」

 いま、ここで倒れたら、前と同じ事になる。絶対に意識を失わず涼と話さなければ――


「お待たせ……竜!!! 」

「やあ、涼……迎えに来たよ……帰ろう、僕たちの家へ。嫌だなんて……言わない……よね……」


 そこまで言った所で僕の意識はプッツリと途切れた――



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あきゅろす。
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