月三物語
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ユラユラとした影が、徐々に人の形になっていく。
「章吾〜また『力』使っただろ? ビンビンこっちに来ちまって、講義どころじゃ無かったから『翔んで』来たよ〜ん」
(とぶ? ビンビン? 何だ、コイツは?)
「涼……何で歩いて来ない? 誰かに見られたら、どうするつもりだ?」
涼と呼ばれた奴は、俺に気が付くとギョッとして言った。
「ダレだ? 章吾が誰かと一緒の時に『力』を使うとは思わなかったから……」
「涼、大丈夫だよ。月島は私達の仲間だから」
赤月が、うなだれた涼という奴に言うと、パッと顔を明るくして俺をジロジロ見上げた。
「そうなんだ〜月島って、名前何ていうの? デッケエな〜」
そりゃそうだ。俺よりも確実に20pは低い。
涼は丁度、俺の胸の辺りにいる。
涼は俺を見るために、頭を斜めにあげて見る。
頭を赤く染め、少し長めの髪を上に立ち上げている。
服装といえば、パンクバンドのボーカルの様な、ピチッとした皮のズボンに黒い光沢のあるシャツだ。
だけど、斜めに俺を覗き込む顔は、今まで見たことが無いほど美しかった。
「浩司だ。『跳ぶ』って何だ? それに、そんな格好、似合わないぞ」
(せっかくの綺麗な顔が台無しだ)
と言いたいのを堪えた。だって男だぜ?
「しょうが無いじゃん。だってオレ、バンドしてるし。ビジュアル系だし」
ちょっと、すねた顔をしてる涼を見て、俺の心臓の鼓動が速くなった。
『どうしたんだ俺?』
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