月三物語
【決意】
事の起こりは、赤月からの電話だった。
「話しがあるんだ……」
深夜二時、赤月は待っていた。そして、知らされた竜のことを……
「……そうか、目覚めたのか」
俺は赤月にそう言うと、黙りこんだ。目の前の灰皿がカタカタと音を立てて動く。
「今は母親だけだが、いずれ涼も……」
「……月島、どうしたら? 」
俺は溜め息をつき口を開く。
「赤月、答えはひとつしかないだろ? 竜に教えろ……」
言い終わったと同時に灰皿が音を立てて砕けた。
「……赤月、悪い……」
赤月は静かに俺を見つめ口を開いた。
「こんなこと言いたくはないんだが……竜の思考で判った事があるんだ。あの二人は姉弟じゃない……」
知ってたさ。ここに来て直ぐに……隠しきれない程の動揺をお前から感じて、読んでしまった。
「そうか、でも逢わせると決めた。なあ、赤月……『運命』てヤツは避けることが出来ないもんなんだな……」
「月島……悪い……私は……」
赤月はただ、うつ向き涙を堪えていた……
良いんだ……これで。
***
次の日の夜――青木が俺のアパートにやって来た。手土産にケーキを持って。どうせ自分が全部食べてしまうのに。
「よっ! 久しぶり。相変わらずここに住んでるんだな。よく飽きね〜な」
「ずっと住んでると愛着が湧いて変える気にもならないさ」
青木は良い奴だ。長く続いたダチはコイツだけだった。俺が≪力》を持っているのを知っても変わらず接してくれる。
ここは、涼と少しの間暮らしたアパートだ。記憶を消され、入院してる間に赤月が買い取って建て直してしまったが……それでも、涼との思い出がある。
駅までの道や商店街……二人で歩いた風景までは、赤月といえども消す事は出来ない。
「なあ、俺はよ……黙っているのは苦手だから言っちまうけど、お前はそれで良いのかよ」
前置きも無しに、いきなり切り出すとは青木らしい……俺は気分が軽くなった気がする。
「何だ? そんな事でわざわざ来たのか? てっきり俺は赤月を責めるなと言いに来たのかと思ったけどな」
「ったく! お前の悪い癖だぜ、直ぐはぐらかすのはよ! 」
せっかく心配して来てやったのによ! と青木が少し怒っている。ありがとう青木……
その日、二人で朝まで飲んだ。いろんな事を話して笑ったり、喧嘩したり、泣いたり……
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