月三物語 【覚醒】 『……涼さん……』 だあれ? わたしをよぶのは……いやぁよ、おきたくない。ほぉっておいてよ…… 『涼さん……僕の声が……聴こえ……ますか?……』 だれだろ? ここは、わたしのユメのくに……だれも、これるはずがないわ。 『……生きています……』 なんなの? だれが、いきてるって? わたし? 『……竜さんは……生きています……涼さん、起きてください』 りゅう?……りゅうって? だれ……? ……竜……私の……竜……! ――【覚醒】―― 目が覚めてはじめて見た顔は、知らない男の子で……金髪で蒼い瞳が心配そうに私を見つめてる―― 「……だれ?……」 自分でしゃべっても私の声じゃないみたい……しわがれた声。 「……涼さんですよね? 」 声を出すのが辛いから首を立てに振ろうとした。けど、指ひとつ動かす事も出来ずに…… 『私は、どうしたの? 』 その時、頭の中で声がした。懐かしい声が…… 『涼、私だよ……章吾だよ』 『章吾? 章吾なの?! 私は、どうなってるの? 』 体も動かせず、話すこともままならない私は、すがりつく様に声に語りかけた。 『章吾! 教えて、私はどうして動けないの? 声が出せないの?』 章吾は教えてくれた。私が何年もの間、廃人同様だったこと。浩司がいつも傍に居てくれたこと。竜が生きて……いたことを。 目の前に竜がいる……死んだと思ってた、竜が…… 私は目を閉じ章吾に語りかけた……ありがとう…… *** 次に目覚めた時、傍にはあの男の子がいた。浩司も竜もしばらくは来ないと言っていた。 「涼さんが回復するまでは、僕が傍に居ます。そこまでが、赤月の依頼なんです……」 回復するまで……したらどうなるの? 考えたくない…… 『誰を選ぶ』のか、なんて。 このとき私は『決断』したのかも知れない。この先の人生の行く末を―― ――私が生きていく道を―― [前頁][次頁] [戻る] |