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月三物語
ページ26

赤月side

 月島と涼の意識が跳んで来た。それも、今までに感じた事のない程の狂気で場所など知らなくても行けた位だ。

 私がデパートに入って行くと、涼は血まみれの弟に寄り添い、自分に向け≪力≫を使った事が判った。月島は――涼の≪力≫に触れ完全に自己を見失っていた。

「――月島っ!!!――」

 肩を揺さぶっても頬を張り倒しても意識が戻らず、ただ涼を呼び続けている。

「涼……愛してる……涼……あいし……て……る……」

 私は……辛い決断をしなければならなかった……月島に涼を忘れさせる……と云う決断を……


「月島、よく聴くんだ! 涼と云う人間はいない。り・ょ・う・は・ど・こ・に・も・そ・ん・ざ…い・し・な・い……居ないんだよ……」



***

「酷いっ! 何で? 何で、こんな事が……」

 僕も既に涙で前が見えない程だ。
 今日は探偵事務所の創立記念とかで一応、定休日だ。お祝いに月島さんが来てくれて。帰った後で、赤月が僕達に話してくれたんだ。

「それで? 月島さんはまだ涼さんを忘れているの? 涼さんと竜さん達は?」

 ボロボロと泣きながらでも、聞くことはちゃっかり聞くんだからな、明日香は。

「竜は命を取り止めたらしい、涼は何処かへ連れ去られていたよ。月島はどうだろう? でも……」


 思い出したのかも知れないよ。だって、警察と探偵ほど人捜しにピッタリな職業はないからね。


 そう言って赤月はウインクをした。


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あきゅろす。
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