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月三物語
ページ25

 向かって来た少年は目が血走り何を言っても駄目なように見えた。仕方なく取り押さえようと警棒に手を置いた時だった。横にいた竜が少年に向かい走って行った。

 あっという間の出来事だった。竜が少年ともみあって……ゆっくりと竜が倒れてゆく。側では血の着いた包丁を握り締めガタガタと震えている少年がいた。

「何故飛び出した!!! 」

 竜を抱き上げると、苦しげな声で言った。

「……だって……アンタが……死んだら涼……が哀しむ……だろ? 」

 そう言うと満足そうな顔で目を閉じた……

 涼がふらふらと竜に近付き竜を揺さぶりながら話しかける。

「ねえ、竜……起きてよ……学校に遅れちゃう。竜……好きよ。愛してる……ねえ何で起きないの?……」


『いやああ!!!竜!!!――』


 俺の意識はそこでプッツリと途切れた――


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