月三物語
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その日もいつも通りのシフトで深夜帯の勤務だった。デパートの警備で特別、危険な仕事ではなかった……筈だった。
いつもの様に涼がバイトが終わると弁当を届けに来る。それが待ち遠しくて時間を気にしていた。
だから、見逃したんだと思う。閉店になった暗い店内を交代で見回りしてる時、ふと違和感を感じた。でも、そろそろ涼が来る時間だから気になりながらも一通り見回り詰め所に戻った。
「先輩、異常ありません」
二人一組が常識のこの仕事で俺は運が良いことに優しい先輩に当たり(中には後輩をいびるのが趣味の奴もいるらしい)涼も先輩の分もおかずを作って来たりしている。
「今日は涼ちゃんは何を持って来てくれるんだろ。月島は本当に幸せ者だよ。料理が旨くて綺麗な彼女がいてさあ」
「先輩、褒めても何も出ないですよ」
「こんばんは〜片山さん。浩司、ちゃんと仕事してるの? 」
涼がやって来て和やかに夜食を食べ始めた時だ。防犯カメラに何か動く影が映った。
「先輩……」
「月島、行くぞ」
心配そうな涼に大丈夫だと声を掛け二人でカメラに映った場所まで行く事に。
映っていた場所は店内入り口で警官でもない俺達は警棒だけが頼りで緊張しながら歩いていた。
その時、目の前でまた影が動いた。走って取り押さえたら、何と、竜だった。
「何故ここに居る? 」
先輩には知り合いだと言って先に詰め所まで戻って貰い、竜に聞いた。
「涼を追い掛けて来たら、ここに入ったからさ」
見付かった子供の様にふて腐れた顔の竜に俺もそれ以上きつい事は言えなくて、早く帰れと言って背中を向けた時、靴売り場のレジ付近で音がした。
「誰だ! 出てこい! 」
声を掛けて出てきたのは、まだ少年で中学1年になったか、どうかの。
「勝手に入って駄目だろ? ちょっとコッチに来てくれるか? 」
子供の悪戯だ、その時の俺は油断していた。見掛けで判断してはいけないと言われてたのに。
「嫌だ! こっちに来るな! 来たら刺すからな! 」
少年の手には、その小さな手に余る程の包丁が握られ、ブルブルと震えていた。
「大丈夫だ。ほら、何も持ってないからな」
両手を挙げて、安心させようとしたのが悪かったのか、少年は勘違いをして向かって来た。
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