月三物語
ページ21
またしても景色がグルグルと回る。何度≪跳んで≫も馴れる事が出来ない、この感覚は。
「浩司、何で付いてきたの? 」
その声で目を開けた俺に映ったのは赤月の家に勝るとも劣らない、日本家屋の『屋敷』と呼んだ方がぴったりのデカイ家だ。
「涼が俺の前から消えて居なくなる様な気がしたから」
涼は哀しそうに笑い俺に抱きついて言った。
「浩司、ここに居たら駄目だよ。だから……≪跳ぶ≫よ」
本当に今日は良く≪跳ぶ≫日だ。段々馴れた気がしてくる。そして、涼が良いよと言うまで待っていたけど中々言わず。不審に思い目を開けたら……
涼の部屋だろうか。やたら、だだっ広いその部屋の真ん中で涼は俺にしがみ付いていた。
「……涼? 」
「……浩司……抱いて……」
そう言う涼の肩は震えていて。何故、無理をしてまで言うのか分からなかった。けど、顔を上げた涼があまりに綺麗だったから……
――涼を抱いた……――
目が覚めた時、そばに寝てる涼は子供の様に安らかな顔をしている。髪を透きながら額にキスをすると、涼が寝言で何か言った。
「う……りゅう……すき……」
涼……真実を知っても……俺は……愛してる。おまえを……
***
「浩司、起きて……」
涼が俺を揺さぶり起こす。既に日は高く昇っていて、涼がそばで笑っている。支度をして≪跳んで≫行こうとした時だった。
「本当に寝坊介だね。竜と一緒じゃ……いっ!た……」
急に頭を抱えて痛がる涼に俺は心配で、抱きしめていたら。
「涼から離れろよ……」
竜が立っていた――
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