月三物語 ページ17 章吾sibe 青木が目を閉じ私が暗示を掛けるのを待ってる。 感情が一気に噴き出して、意識しないで、唇を合わせていた。 『どうかしてる……こんな事』 青木が優しくキスを返してきた時は涙まで出てきそうになって。何か言おうとするのを遮り、愛の言葉を囁いていた。 ***** 「あ――れ? ここは『何処だ?』」 青木はびっくりした顔で周りをキョロキョロ見渡し私の顔を見て赤くなった。 「うおっ! 『アンタ誰だ?』」 照れ隠しに驚いた振りをするのは二度目。一年前に――初めて出会った時もそうだった…… 「さっき月島と来た時、自己紹介したよ」 丁度、佐伯と一緒に月島が入って来た。 ≪力≫で呼び出し事情も知ってる月島が私を見て何か言いたそうにしてたが、青木を何とかしなければと思ったらしい、連れて帰る時『話しは後で……』と意識を送ってきた…… 「……章吾様……」 佐伯が話し掛けようと、でも思い返して黙って部屋から出て行った。ドアが閉まった途端、我慢してた涙がとめどなく流れるのを、止める事が出来なかった…… [前頁][次頁] [戻る] |