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僕が探偵になった訳
プロローグ

 オレは榊原秋。大学1年で今時の若者だ。

 何の因果か、金髪碧眼でオマケにロン毛の探偵に気に入られ探偵助手などと、余り有り難くバイトをする様になった経緯は拍手お礼で説明したので、その後の話しから、この物語は始まる。

「探偵助手っていっても何をすれば良いんだ?」

 昨今の地震の多さに耐えられるか甚だ疑問の多いビルの二階に、その探偵事務所はあった。

「何をって? 依頼が無い時は掃除に決まってるだろう?」

 最早クッションの効かぬソファーに座り、ゆったりと新聞を見ながら探偵は言った。

 こんな事ならコンビニでバイトでもした方がマシだと思いつつ、ここ一番で押しの弱いオレは、ブツブツ言いながらも掃除を始めた。

「時に、君の特技は何だね?」

 狭い事務所だ。直ぐに掃除は終わり手持ちぶたさに手近にあった電話を何回も磨いていたら、探偵が聞いてきた。

「特技か? 高校の時は陸上で短距離してたけど」

 すると探偵は満足そうに頷き言った。

「探偵の必須項目に『足が速い』というのがあるんだ。いざという時に逃げれる様にね」

 いざという時? どうせこんなボロい事務所なんだから、浮気調査ぐらいしか仕事なんかないだろと高をくくってたオレは、急に不安になった。

 万が一にでも危ない仕事が有ったら逃げようと、この時のオレは決めていた。


 オレがバイトを始めて初めての冬が近付いたある日の事だった。大した依頼もなく、走って逃げる場面が無かったので、辞めもせずにいたオレに受難の時が遂に来たのだ。

「すみません〜こちら探偵事務所ですよね?」

 事務所のドアごしに、顔だけを出して男の人が覗いた。

 見た所普通の会社員のオッサンだ。オレの親父よりは若いが。

「はい! そうですよ〜こちらが『藤原 名探偵事務所です』!」

 堂々と胸を張り藤原は言ったが、続いてオッサンが言った台詞に急に機嫌が悪くなった。

「いやあ〜良かった……実は向かいの探偵事務所で断わられて。困って居たら、こちらだと『絶対』に断わらない筈だから、行ったらどうだ? と言われたんだよね」

 藤原は断わろうとしたらしいが、このところ依頼がサッパリで寂しい懐を思い出したのか、引きつりながらも笑みを作りながら、椅子を勧めて話しを聞く為に自分も座ったのだった。



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あきゅろす。
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