[携帯モード] [URL送信]

人魚シリーズ


 この果てしない海の何処かに、伝説の魔女が居るという。

 僕は、ずっと探していた。そう、探していたんだ。

「坊ちゃま、いい加減にして下さい! 私達に隠れて、一体何処へ行っているんですか? 私めはもう、心配で心配で……」

 リノがそう言って、オイオイ泣く。
 年老いた姥を泣かせる僕はなんて薄情者なんだろ。

「リノ、ゴメンな。でも、どうしても魔女に会って叶えて貰いたい願いが有るんだ」

 僕は、精一杯の気持ちを込めてリノに話す。

「判っておりますよ。あの人間の子供の事でしょう? でも、坊ちゃまが責任を感じる必要は有りませんよ。知らなかったんですから。人魚の肉を口にした者がどうなるか……それに、坊ちゃまが助けなければ、あの子は死んでいたでしょう」

 リノはそう言って諦める様に説得して来た。
 あの日から……



 あの日、僕が怪我をした原因を知った父王は言った。

「リオン、人間に私達の一部を与えてはいけない。その人間の子供の為にも、お前の為にもだ」

 理由を聞いて僕は愕然とした。

「人間に人魚の一部を与えると云う事は、私達の力を分け与えると同じ。人間では、身に付かない能力を手に入れる」


 でもその力故、人間の体では耐えきれず、平均寿命の1/4しか生きられない――


(そんな! 僕は、ただ美海を助けたかった。それだけなのに……)


    *****

 それからと云うもの、僕は魔女を探し続け、やっと居場所を突き止めた。
 だから、リノの頼みを聞く訳には――


「分かりました。でも坊ちゃま、ひとつ条件があります。これを聞けないのならば行かせる訳には、行きません!」

 どんな条件を出されようとも、僕は海の魔女に会いに行くつもりだったから、素直に頷いた。

「何だよ、婆ちゃん。オレに、何か用事?」

「コラ! 坊ちゃまの前で何て態度だい」

 よりにもよって、コイツとは。僕の幼馴染みで、ケンカ友達のセイヤだ。

[前頁][次頁]
[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!