人魚シリーズ
6
この果てしない海の何処かに、伝説の魔女が居るという。
僕は、ずっと探していた。そう、探していたんだ。
「坊ちゃま、いい加減にして下さい! 私達に隠れて、一体何処へ行っているんですか? 私めはもう、心配で心配で……」
リノがそう言って、オイオイ泣く。
年老いた姥を泣かせる僕はなんて薄情者なんだろ。
「リノ、ゴメンな。でも、どうしても魔女に会って叶えて貰いたい願いが有るんだ」
僕は、精一杯の気持ちを込めてリノに話す。
「判っておりますよ。あの人間の子供の事でしょう? でも、坊ちゃまが責任を感じる必要は有りませんよ。知らなかったんですから。人魚の肉を口にした者がどうなるか……それに、坊ちゃまが助けなければ、あの子は死んでいたでしょう」
リノはそう言って諦める様に説得して来た。
あの日から……
あの日、僕が怪我をした原因を知った父王は言った。
「リオン、人間に私達の一部を与えてはいけない。その人間の子供の為にも、お前の為にもだ」
理由を聞いて僕は愕然とした。
「人間に人魚の一部を与えると云う事は、私達の力を分け与えると同じ。人間では、身に付かない能力を手に入れる」
でもその力故、人間の体では耐えきれず、平均寿命の1/4しか生きられない――
(そんな! 僕は、ただ美海を助けたかった。それだけなのに……)
*****
それからと云うもの、僕は魔女を探し続け、やっと居場所を突き止めた。
だから、リノの頼みを聞く訳には――
「分かりました。でも坊ちゃま、ひとつ条件があります。これを聞けないのならば行かせる訳には、行きません!」
どんな条件を出されようとも、僕は海の魔女に会いに行くつもりだったから、素直に頷いた。
「何だよ、婆ちゃん。オレに、何か用事?」
「コラ! 坊ちゃまの前で何て態度だい」
よりにもよって、コイツとは。僕の幼馴染みで、ケンカ友達のセイヤだ。
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