人魚シリーズ 7 私の記憶の中の王子さまは金色の髪に、海の色よりも深い碧だったはず。 だけど今、目の前にいる男の子は、日本人だから当たり前なんだけど、黒い髪と同じ色の瞳。 でも、言葉とは裏腹にその瞳は優しく、どこか懐かしさを感じる。 「なっ、なによ! 誰がアンタの裸なんか! 行こ、美海」 香苗が私の腕を掴み引っ張って行こうとするが、足が動かず、目を反らす事も出来ない。 私達は見つめ合ったまま、かな縛りのようになっていた。 「海斗(カイト)な〜に見つめ合っちゃってんの?」 「……星弥(セイヤ)」 その途端、止まってた時が動き出した。 香苗に引っ張られるままにその場から離れる。 後ろを振り返りながら。 ***** 「ふ〜ん。あの子なんだ〜リオンの言ってた子って」 「星弥、分かってるな?」 「大丈夫だって、今の姿じゃ分かりっこないさ」 星弥と呼ばれた男は、楽しそうに笑っている。 海斗(リオン)は不安になった。 (コイツ、面白がってるな) 「さあ海斗、教室に戻ろうぜ」 僕は溜め息をひとつ付きシャワーを浴びに行く。 ***** 「香苗、香苗ってば。どうして、そんな怒ってるの?」 結局、水着を着替えるためにシャワー室まで香苗は私を引っ張って来た。 「アイツってば、本当あんな奴だとは思わなかったよ」 「香苗、あの子知ってるの?」 「私のクラスに先週、転校してきたばっかだよ。あの一緒にいた奴と二人で。いい奴だと思ったのに……」 着替えを済まし、教室まで二人で歩きながら香苗が話してくれた。 香苗の教室まで来た時、さっきの二人が女の子達に囲まれているのが見えた。 「ウチの教室では優しくて、かっこいいって人気があんだよね。でも、何で美海にあんな事言ったんだろ」 香苗の言う事が段々聞こえなくなって来て―― 目の前が暗くなった途端、私の意識が途切れた [前頁][次頁] [戻る] |