3 「御厨くん」 「だあああああああああっっ?」 突然背中から抱きしめられて、股間を鷲掴みされた。 いいいいいいいいつの間にっっ? 「そんな大声出さないでくれ。浴室は声が響くんだ」 彼は顔をしかめてたしなめる。 直接肌が触れているから、全裸ってことで間違いないだろう。 そして、その全裸男は、ほぼパニック状態のおれの襟足に吸い付いた。 「はう、あぁ?」 「色気がないな……で、どうするね?」 おれの身体を自分に向き合わせて更に迫ってくる。 全裸の男を前にして、混乱しすぎて気付かなかったが。 このひとって……ホモ? あ……や、そうだよな。 おれみたいな野郎を誘うってことは、ホモなんだよな。はは。 「ふふ……」 え?笑顔? なにこれ。カッコいいとか思ったおれはなんなの? つかやべえ。おれ初めてホモ見ちゃったよ。 ホント全然気づかなかった。 ホモって言っても普通じゃん。 ちょっとフェロモン過多っぽくて、おっさんのくせにイケメンで、やたら身体作って腹筋割れてるだけじゃん。 しかも既にギンギンにデカいし。 あははははは。 …………助けてください! 「きみは可愛いね。こんな事をする私すら嫌悪しない。今時の子ってみんなそうなのかい?」 「や、あの……わかりません。けど、嫌悪って。そんな、感情的になるのってカッコ悪いですし……」 「キスしていいかい?」 「はい?」 や……ちょっっ。ええっっ? 応える間もなく抱き寄せられて口にキスされた。 触れる唇が柔らかくて、くすぐられているみたいに軽く触れるだけのキスのせいで、おれは余計に混乱した。 犯されるとか、脅迫されるとか、そんな暴力めいた雰囲気は微塵もなくて。 おれを抱きしめる手が、濡れた肌を優しく滑るように撫でてくるし。社運とか、上司の勤務姿勢とかの現実を突きつけられて、それらの事実がぐるぐると頭をかきまわしてくれたものだから、おれはこの状況を理解できなくなって。 どうしようもなくて、目を閉じてしまった。 抵抗出来なくなったおれは、シャワーで隅々まで洗われて、ベッドに拉致された。 しつこいと感じたくらいだから、たっぷりと時間をかけてくれたんだと思う。 どうせ逃げられないならさっさと一息にやってくれ!とか、焦れったくなったりもしたけど。 多分それではおれが傷ついてしまうからなんだろう。彼は本当に丁寧におれを拓いてくれた。 ただ単にねちっこい性癖なのか、それともこうやって初めての相手を仕込むのが趣味なのか。それこそおれは、信じられないくらいとろとろに蕩けさせられて、状況を忘れてしまう程の快感に酔わされた。 濡れた長い指がおれの中に侵入して、時間をかけてゆっくりと抜き差ししながらおれを慣らしていく。 指が一本ずつ増やされるたびに、身の置き場が無くなるような例えようのない焦燥感に駆られる。 「……いい子だ。素直な子は好きだよ」 そんな甘い言葉で追い詰められて、だんだんその気にさせられて。 前立腺を刺激された時の逃げ出したくなるようなムズムズ感とか、キチキチに広げられた肛門の、排泄にも似た感覚にすら興奮を覚えてしまって。 しかも舐めてるし。 舌入れて、抜き差しされて、掻き回されて。 もうおれおかしくなりそう。 アナニー経験者でもないのに。 何でこんなに興奮させられるのか分からない。 そんなおれの混乱を知っていながら、彼は完勃ちしているおれ自身を撫でてさらに責めてきた。 押さえきれなくて思わず声が出る。 信じられないくらい甘ったるくて気色悪いおれの声。 なのに、彼はそんなおれの反応を悦んで褒めてくれた。 「きみは随分と可愛くなるんだね。わたしももうたまらないよ」 抱きしめて、囁きとキスでおれを煽る。 そんな彼も蕩けそうな顔をしていた。 「初めてだから辛いかな。でも、うんときもちよくしてあげるよ。可愛い渚くん。もっと、その声聞かせて」 両膝を広げるように持ち上げられて、指で拡げられていた孔が彼の目の前に露わになる。 やがて周辺を擦るように宛がわれた柔らかな感触が、さらに孔をキチキチに拡げながらゆっくりと潜り込んできた。 ぬめる灼熱の肉が徐々におれの腹の中に挿入ってくる。 「あッ……あ、あ」 「いいよ、上手だ渚。ああ……キツイ」 「んん……ん、ぁッ、あ……先、生」 「……渚……渚。なんて、可愛い!」 腹の中に男のモノが入っていく初めての感覚。 気持ち悪いって言うより、生理的な感覚なのか、落ち着かなくて訳分かんなくなって。 やがて、奥の痛みを伴って、おれの尻に彼の肌が密着した。 「全部入ったよ。渚」 「あ……せん。せ」 「少し動くよ」 「……あ!あ、あッ。……やッ」 ほんの少し揺さぶられただけで、中から押し上げられて漏らしてしまいそうになる。 しかもおれの勃ったものはずっと手コキされ続けているし。 興奮して、動揺して。 おれは尻に彼を迎え入れたままのあられもない姿で、反応過多な敏感女さながらの声を上げていた。 なんでおれの声はこんなに変わってしまうんだろう。 喉の奥が締まって、声が数段高くなっている。意識しては絶対に出せない、イヤらしく絡み付くようなネコみたいに甘ったれた声。 気持ちよくて、興奮しすぎて。 頭の中が真っ白になっていく。 「あん、あ、せんせ。ダメ!ダメェェ!やだぁッ!」 「渚……渚っ!っ……締まる!」 「いッ……達く。達く!……んうぅ出るぅぅ――……っ!」 更に大きく膨らんで、ビクビクと跳ね回るように反応した灼熱が、おれの中を激しく刺激してくれたものだから、おれはそのまま叫び続けて弾けるような衝動とともに自分の腹の上に射精してしまった。 噴きだすというよりもダラダラととめどなく溢れてくる。 脳天まで痺れるような持続する快感と、後に続く解放感。自分が粉々になって融けていくような幸せな気分のままで、賢者タイムが無い。 ホモセックス。 ……ぱねぇ。 契約は継続しました。 ごめんなさい。おかあさん。 [*前へ][次へ#] |