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楽園の紛糾
いつも君のそばに2





 統合本部の窓から見える街路樹の葉が、朝夕に低くなる気温によって色づき始めていた。舞落ちる枯れ葉が、冷たい風にふかれて道路脇にただよっている。
 冬が近づいていた。
 ギャラクシア艦長として就任継続する事になった次郎は、辞令を受けるために統合本部へと出向していた。
 人事部を通して、めずらしく執務室に詰めている総帥のもとへと出頭し、聖から直々に辞令を渡された。
「哨戒艦がジェイル行きになってしまった今、ギャラクシア艦隊には哨戒勤務についてもらう。遮那王出身の君だ。できるな?」
「はい」
「君の父上も、兄上も優秀な軍人だ。杉崎は血筋がいいとみえる」
 聖はデスクから離れて、次郎の傍に立った。
「君は、結婚は?」
「は?」
「――地球で、妻子は」
「いえ、自分は独身でした」
「兄上は?」
「兄も、独身です」
 突然何を訊くのか。
 次郎は戸惑いながら答えた。
 そんな反応を見て、聖は苦笑した。
「残念だな。杉崎の血筋は途絶えてしまったのか」
 次郎はその意味を知って、聖とともに苦笑した。
 正式な婚姻関係になくとも、ひょっとしたら兄の落とし種が存在するかもしれない。次郎はそんな事を考えながら笑っていた。
「済まない。年寄りの戯れ言だ、忘れてくれたまえ」
 苦笑したまま自分の事を年寄りと言う。次郎はその形容があまりにも似つかわしくなくて不自然に思った。
 執務室の一角では、ジェイドが失笑している。
 意味が分からない次郎は、余計な事はなにも言わないでおいた。
「君の働きに期待している。哨戒艦が帰還するまで、彼等に変わってHEAVENを守って欲しい」
 聖の期待に応えて、次郎は敬礼で返した。
 聖は満足そうに退室する次郎を見送った。
「哨戒艦の出発は明後日十六時、第三滑走路からだ。ゲートは八番。一般の立ち入りは禁止しているが、君は見送りに行ってやれ。たとえ短期間でも、君の上官と部下だった男たちだ」
 ドアを開けた次郎の背中に声をかける。次郎は振り返って、その声に応えてからドアを閉じた。
「――フェニックスで会ったときは、顔中シュラバだったから分からなかったが。なかなか美形じゃないか。脚なげーし、スタイルいいなぁ……」
 次郎が退室してから、聖が脂下がってつぶやいた。
 ジェイドは心の中で、やはり好みだったか、と納得した。
「兄貴のほうとは、違うタイプだな……。ありゃあ母親似か?」
「部長の奥方にはお会いした事がありませんので存じません」
「ふ〜ん」
 ジェイドは弟のほうには興味が無いとみえる。自分と似たタイプの頑丈そうな男が好きだとは、結局はナルシストなのかと聖は思った。
「何か?」
 また良からぬ事を考えていると、ジェイドは直感した。
「いや。なんでもない」
 聖はジェイドの嫌いな表情で、ニヤリと笑って返した。




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あきゅろす。
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