楽園の紛糾 いつも君のそばに3 統合本部を出てから軍用車を回して、次郎はギャラクシアが補修を受けているドックへとハイウェイを走らせた。 明後日。哨戒艦艦隊はジェイルへと旅立つ。 HEAVENの外側に軌道をもつその惑星は、生命存在可能域に辛うじて位置しており、外宇宙からの干渉を防ぎ、HEAVENへの侵入を未然に防ぐための最前線基地が設けられている。氷に閉ざされた凍てつく大地は、息づく生命たちにとっては苛酷な環境であり、そこはまさに流刑地の名にふさわしい。 その厳しい自然のなかで、二十年という任期を課せられた彼が、今と変わらずにいられるのか。 次郎は確信が持てなかった。 だが、森は武蔵坊を愛し続けるだろう。 遠く離れているからこそ、変わらぬ想いで生き続けることができる。傍にいる自分よりも、ともすると思い出のなかの恋人のほうが、より理想的であり続けるかもしれない。 ふたりがどうなるのか。 武蔵坊はどのような選択をするのか。 次郎は考えを巡らせてから、携帯を手にとって発信した。 通話の切れた携帯を握ったまま、森は茫然としていた。 なぜ、次郎は武蔵坊の出港を知らせてきたのだろう。 自分はどうすればいいのだろう。 正しい答えなど分からない。 戸惑い迷う森の閉じたまぶたから涙が零れ落ちた。 [*前へ][次へ#] [戻る] |