book 蝉の声 はっ! 目を覚ました。 見えるのは自分の部屋の天井で。 時計の針が鳴り響くベッドの上で僕は荒い呼吸を落ち着かす。 汗ばんだ手の平でギュッと自分を抱きしめた。 カタカタと震える体は酷く冷たくて。 静まりかえった部屋に僕の心臓の音が響く。 ―ドクン― ―ドクンー 「はっ…ん、今は何時…?」 携帯を見るとそこには 8月14日 と、書かれている。 「12時過ぎ…」 そう独り言をこぼしながら窓の外を見る。 特に変わった様子はないが、僕の頭は酷く痛む。 変に目が冴えてしまい、僕はそのままベッドに体を預けた。 することもないとなると思い出してしまうのは夢の出来事。 猫をおいかけていった皐月の背中がトラックにぶつかった瞬間。 やけにうるさい蝉の声や僕にそっくりだったあの少年。 自分でも驚く程僕はそのことを鮮明に覚えていた。 「大丈夫…あれは夢だもん…」 自分に言い聞かせるように何度も何度も唱えて僕は目を閉じた。 → [*前へ][次へ#] [戻る] |