◎ 壬生浪顛末記 _
◇3◇
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それに、相葉先生がおっしゃる通り
松本さんは最近夜になると良く出掛けていた
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道場の離れで私達食客は
寝泊まりするんですけどね、
松本さんは大概いませんでしたよ
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最初は女の人の所にでも
遊びに行ってるんじゃあ無えかって
思ってたけど、
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まさか、辻斬りとは
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そこで、私はある夜
松本さんの背後を着けることになったわけ
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実は、これが私にとって初めての
人殺しなんですよ
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冒頭に戻り
私は松本さんの後ろをこっそり
着いて行きました
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ところで、松本さんたら
足が速いもんでね
そりゃ着いて行くのだって
一苦労です
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何処に行くのかもわからない
全くちぐはぐな道を松本さんは行く
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もう、これは黒だと思いましたよ
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顔をあちこちに向けて
誰か探しているんですもの
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さすがに私も焦りました
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目の前で人殺しなんて
気持ちの良いものじゃありません
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それに、繰り返すようですが
私はまだ実践をしていませんからね
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そこになんと
一人の落ち武者の様な身なりの男が
近づいて来るじゃありませんか
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もう、ここで逃げたらそれは
男じゃありません
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覚悟を決めてその場から
足を動かしませんでした
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様子を見守っていれば
どうやら何か話しているようで
暫くすると互いに刀を抜きます
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「あっ!」
その瞬間ヒヤリとしました
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松本さんの背後にさらに数人
剣を持った人が息を殺し立っていたんです
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なるほど、
松本さんに捕まった落ち武者は
辻斬りの容疑者の松本さんを
元々探していたんです
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勿論、殺すつもりでね
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いくら、松本さんでも
四人対一人では勝つ見込みは低い
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一瞬も迷わず私は行くしかないと
決心しました
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和也「後ろから襲うなんざ
武士としてどうなんでしょう」
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松本さんの背後に立つ男等に
声をかければ彼等はまんまと
振り向きました
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その瞬間をすかさず狙い
勢い良く斬りつけます
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もう何か考えてしまったら
戸惑うなんてわかってましたから
ほぼ無心でしたよ、あの時は
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真剣の切れ味はすごいです
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今、あの剣を使えば
きっと良いとは言えぬ刀だったんでしょうが
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とにかく、渾身の力を込めましたから
その刀は肩から上半身に深い傷を作りました
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殺したんですよ、人を
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もうそこからは
刹那の出来事でした
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松本さんは私の存在に気づくと
驚いたのか
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『どうして…、』
と声を上げてましたが
返事をする余裕なんてありませんでした
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[*ばっく]
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