02
眞魔国、城下町。
活気あふれるこの街で、二人の男があわてた様子で走り回っていた。
一人は、栗色の髪に同色の目。柔らかい穏やかな顔のつくりをした青年で
もう一人は、長身で濃い茶色の髪をもつ男。
アキラとセルゲイである。
二人が慌てているのには理由があった。
リンチェ家の当主であるイーヴリンが目をはなした隙に、いなくなってしまったのである。
イーヴリンとて、今年で17。
もうはぐれるような年齢ではない。
しかし、初めてストラナー大陸を出た彼女にとって、眞魔国は未知の国だった。
見るものすべてが初めてのものばかりで、普段は大人っぽい彼女も今回ばかりは年相応の反応を示していた。
それは、アキラとセルゲイも例外ではない。
二人にしてみても、ストラナー大陸を出るのは初めてのことである。
珍しいものについつい目映りしてしまい、イーヴリンから目を離してしまったのだ。
イーヴリンがいないことに気付いたのは、彼女がいなくなってからしばらくたってからのことだった。
「セルゲイ、このままじゃあ、らちがあかない。分かれて探そう。」
探し始めて数分。
アキラは走り続けてあがった息をしずめながらそう告げた。
アキラのその言葉に、セルゲイが眉をしかめる。
「・・・別々に探すのは構わんが、お前まで迷ったらどうする気だ。」
「シグルドじゃあるまいし・・・。
俺は国外での任務が多いから大丈夫だよ。こういうの慣れてるから。」
「・・・それもそうだが」
「大丈夫だって、セルゲイ」
眉間に皺をよせながらそう言うセルゲイに、アキラは苦笑しながら答えた。
しばらく互いに無言で見つめあう二人。
その沈黙を先に破ったのはセルゲイだった。
ため息をついてアキラの頭を軽く叩く。
「わーったよ。その代わり、日が暮れる前には必ず宿へと戻れ。
・・・例えイーヴリンがみつからくても、だ」
セルゲイのその言葉にアキラは穏やかな表情で頷いた。
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