01
目前に広がる風景に、眞魔国の魔王である渋谷有利は混乱していた。
「・・・もしかしてスタツア先間違えた?」
確かにここは自分が納めている国がある世界だろう。
しかし、いつも呼び出させる風呂場や眞王屏でもなく、緑広がる所にある川。
それほど深くはない川に座り込んでいる姿は、見る人が見ればおかしいだろう。
「そこで何をなさっているのですか?」
そのままの姿勢で、キョロキョロと辺りを見渡していた有利は背後から聞こえてきた声にはっとして後ろを振り返った。
そこにいたのは、ウェーブのかかった栗色の髪をもつ一人の少女。
「大丈夫でございますか?」
薄く色づいた唇を開いてそう問いかける姿は、まるでお人形が動いているようである。
「君は・・・?」
「私はイーヴリン・リンチェと申します。」
そう言って少女はスカートの裾を軽く握って小さくお辞儀をした。
その少女の行動に有利は慌てて立ち上がると川からでて少女の隣に立つ。
「お、俺の名前は渋谷有利原宿不利・・・じゃなくて渋谷有利」
「・・・ユーリ様と申されるのですね。」
「有利でいいよ。
・・・それよりさ、ここどこだかわかるかな?」
見渡す限り緑では場所を特定するのは難しい。
有利は再び辺りを見渡してからそう問いかけた。
目の前にいる少女なら、この場所がわかるだろうと思って…。
「・・・それが、お恥ずかしい話なのですが、連れとはぐれてしまいまして」
「もしかしなくても、迷子?」
「はい・・・」
恥ずかしそうに俯いてそう呟く少女。
その仕草に彼女いない歴=年齢の有利が照れないわけなく…
有利は慌てた様子で声をかけた。
「そんな落ち込まないでよ、俺も似たようなものだしっ!!」
有利のその言葉にイーヴリンは顔を上げて微笑んだ。
「ありがとうございます。ユーリ。
ここがどこかはわかりませんが、眞魔国の国内だということはわかりますわ」
「え、そうなの!?」
「はい。私、お兄様とお付きの執事と旅行に来ましたの」
心の底から幸せそうに言う少女に有利の表情も緩む。
自分の知る気障な護衛を思い浮かべて有利は少女に手を差しのべた。
「ここが眞魔国なら町にでればなんとかなるかもしれない。・・・一緒に行こう。」
穏やかな表情で差しのべられた手をとり、少女は嬉しそうに微笑みかけた。
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