連綿たる経常
その歳のはじめてを。
20120606。
おめでとう、神田。
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教団へと帰還してしまえば、神田とは離れてしまう。
任務中だったから、どうこう……、なんて事は無いけれど。
距離が近いのは、側に居れたのは確かで、憚る必要もなくて。
今は、遠回りをして彼の部屋を、送って行くとは言えないから。
然り気無く距離を取りつつ、その背中を追う。
着いたのが遅かったから、時刻は夜中の少し前くらいか。
多分、並んで歩いても、他者に見られる事は、粗無いであろう。
でも、隣には、……見張りたる彼、リンクが居る。
咎めたり……、なんて事はせず、見てみぬ振りをしてくれるとは思うが。
彼は知っているから、二人が恋人だと言う事を、事実を、現実を。
でも、何と無くそれは気が引けて、いや、連れ回しているのだけれども。
かつん、と、歩みが止まった、その扉の前には……。
「……何だ?」
色とりどりの包装紙に包まれて、もしくはリボンが結われ。
様々な形状の、彼に似つかわしくない可愛らしい物達。
「……ぁ、」
「何だ?」
思わず口を押さえた、忘れてた訳じゃない、でも……。
そう、今迄、何故、……馬鹿だ、自分は。
「モヤ……、アレン?」
「……それ、……誕生日、の、」
ちら、と、振り向くと、ふ……、と、考える素振りを見せて。
その言葉で思い当たったらしく、彼が呟いた、あぁ、と。
「今日は6日(ムイカ)だったか……」
「……ぁ、あの、……、」
プレゼントであろう物の横に一歩を踏み出すと、そのまま無造作に足を払う。
ざら、と、それらは避けられて、入り口の前には何も無くなった。
「ユウ!?」
「黙れ、アレン。……ちょっと来い!」
「ぇ、……あっ!?」
「ウォーカー!」
ドアを開けると、神田は振り返り様に、素早くアレンの腕を掴んだ。
そのまま強く引いて、二つの身を滑り込ませると、がちり、と、鍵を掛ける。
「神田ユウ!ここを開けなさい!!」
「俺の部屋だ!てめぇの指図なんか受けるかっ」
「神田ユウッ!開けないと……」
「うるせぇ、5分だ!少し黙ってろっ」
「……」
叩かれて軋むドアが静かになる、それは了承の印。
「来い」
手を引かれて、ベッドの前に来ると、座るように促された。
手を握ったままに、俯くアレンの顔を、跪いて神田は覗き込む。
「アレン……」
「……ごめ、ん」
「何が」
「だって、ユウ……」
「仕方が無い事だろう?任務だったんだ」
「……で、も……、でも、」
「アレン」
「……」
「俺はお前が側に居れば、他は何も構わない」
「……ユゥ、」
「そんな顔はするな」
「でも、……」
「……なら、」
「な……、に?」
「おめでとうの言葉をくれるか?」
「……ユウ?」
「お前に、誰よりも先に、おめでとうと言われたい。駄目か?アレン」
見詰めてくる視線が優しくて、涙が一筋頬を伝うと、その線を追って。
ぽろぽろと、アレンの瞳から雫が溢れ落ち、繋いだ手を濡らす。
そっ……、と、その液体を掬う様に唇を寄せると、神田はやわらかくキスをする。
「アレン。言ってくれるか?一番初めにおめでとうと」
「ん。……ぉ、おめで、と、ぅ、……ユウ、誕生日……ぉめ、で……と、」
「ありがとう、アレン」
互いにほころぶ笑顔を認め、どちらともなく寄り合い、口付けを交わした。
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