連綿たる経常 その歳のはじめてを。 20120606。 おめでとう、神田。 ********** 教団へと帰還してしまえば、神田とは離れてしまう。 任務中だったから、どうこう……、なんて事は無いけれど。 距離が近いのは、側に居れたのは確かで、憚る必要もなくて。 今は、遠回りをして彼の部屋を、送って行くとは言えないから。 然り気無く距離を取りつつ、その背中を追う。 着いたのが遅かったから、時刻は夜中の少し前くらいか。 多分、並んで歩いても、他者に見られる事は、粗無いであろう。 でも、隣には、……見張りたる彼、リンクが居る。 咎めたり……、なんて事はせず、見てみぬ振りをしてくれるとは思うが。 彼は知っているから、二人が恋人だと言う事を、事実を、現実を。 でも、何と無くそれは気が引けて、いや、連れ回しているのだけれども。 かつん、と、歩みが止まった、その扉の前には……。 「……何だ?」 色とりどりの包装紙に包まれて、もしくはリボンが結われ。 様々な形状の、彼に似つかわしくない可愛らしい物達。 「……ぁ、」 「何だ?」 思わず口を押さえた、忘れてた訳じゃない、でも……。 そう、今迄、何故、……馬鹿だ、自分は。 「モヤ……、アレン?」 「……それ、……誕生日、の、」 ちら、と、振り向くと、ふ……、と、考える素振りを見せて。 その言葉で思い当たったらしく、彼が呟いた、あぁ、と。 「今日は6日(ムイカ)だったか……」 「……ぁ、あの、……、」 プレゼントであろう物の横に一歩を踏み出すと、そのまま無造作に足を払う。 ざら、と、それらは避けられて、入り口の前には何も無くなった。 「ユウ!?」 「黙れ、アレン。……ちょっと来い!」 「ぇ、……あっ!?」 「ウォーカー!」 ドアを開けると、神田は振り返り様に、素早くアレンの腕を掴んだ。 そのまま強く引いて、二つの身を滑り込ませると、がちり、と、鍵を掛ける。 「神田ユウ!ここを開けなさい!!」 「俺の部屋だ!てめぇの指図なんか受けるかっ」 「神田ユウッ!開けないと……」 「うるせぇ、5分だ!少し黙ってろっ」 「……」 叩かれて軋むドアが静かになる、それは了承の印。 「来い」 手を引かれて、ベッドの前に来ると、座るように促された。 手を握ったままに、俯くアレンの顔を、跪いて神田は覗き込む。 「アレン……」 「……ごめ、ん」 「何が」 「だって、ユウ……」 「仕方が無い事だろう?任務だったんだ」 「……で、も……、でも、」 「アレン」 「……」 「俺はお前が側に居れば、他は何も構わない」 「……ユゥ、」 「そんな顔はするな」 「でも、……」 「……なら、」 「な……、に?」 「おめでとうの言葉をくれるか?」 「……ユウ?」 「お前に、誰よりも先に、おめでとうと言われたい。駄目か?アレン」 見詰めてくる視線が優しくて、涙が一筋頬を伝うと、その線を追って。 ぽろぽろと、アレンの瞳から雫が溢れ落ち、繋いだ手を濡らす。 そっ……、と、その液体を掬う様に唇を寄せると、神田はやわらかくキスをする。 「アレン。言ってくれるか?一番初めにおめでとうと」 「ん。……ぉ、おめで、と、ぅ、……ユウ、誕生日……ぉめ、で……と、」 「ありがとう、アレン」 互いにほころぶ笑顔を認め、どちらともなく寄り合い、口付けを交わした。 ********** [*前へ][次へ#] [戻る] |