幻想
危機も憂事も運命も、繋がる先は覇王様?(スーダン・田中眼蛇夢)
※お相手は田中くんです。題名に尽きましては全力でスルーして頂けましたら幸いです(深謝)
※若干のシリアス→甘め、というような感じです。前提として田中くんは主人公ちゃんが好きなものの、それを伝えてはおらずの状態です。
※主人公ちゃん設定はございませんので、どうか今回も素晴らしいカスタマイズを施して頂けましたら幸いの限りです…。
※以上諸々、ご承諾頂けます方々がいらっしゃいましたら、この度もお読み頂けましたら光栄至極でございます。
*****
やって、しまい…ました。
これは完全に私の不注意です。
いやしかし、困りました。
みょうじおなまえ、只今採掘中のお山にて、
絶賛、遭難中です。
―事の始まりは今朝でしょうか。
今日はお休みのメンバーが多くて、でもノルマも厳しいという事で、どこの採集場所も大体一人で行く事になりました。
その中でも一番元気モリモリだった私が、自らお山への採集を名乗り出た訳です。
正直一人で採集に行くのは初めてだったので、気負った部分もあるし、どこかはしゃいだ部分もありました。
採集に集中し過ぎて止め時が解らない感じ…ランナーズハイのような状態でしょうか?
採集中は全く気付かなかったのですが、なんだか自分が思っているよりも体力の限界まで没頭してしまったようで…
疲れで足がもつれちゃいまして、採集の帰り道でうっかりすってんころりん。
その時に採集物を見事にぶちまけてしまいました。
せっかく採集したそれだったので、えいさと拾い集めている間に、これまた不注意としか言い様がないんですが…
背後が崖になっているとは露知らず。
後ろ足を取られ滑らせて、崖の下までズザザザーな現在です。
見上げれば、たかだが3m位のちょっとした崖。
落ちるのはこうも簡単なのに、それでも一人で上がるには絶望的な高さです。
下に降りていこうにもなかなかの急斜面。
おまけに足もちょっと捻ってしまったようです。
……うん、遭難時のお約束、ですね。
非常にベタかつ危機的な状況です。
なんて冷静に分析をしている場合ではないのですが…。
とりあえず、一人なので、動けないのではどうしようもありません。
嘆いても誰にも声は届きません。
ならば私に出来る事はたった1つ。
どうにか体力を温存して、明日の採集時間に誰かがお山に来てくれるのを待つ事だけです。
明日になれば…流石に誰かが私が居ない事に気付いて、お山の採集ついでに捜してくれるかもしれません。
そう、それまで気をしっかり持って、頑張ります!
――
…ついさっきまでは、そう…気丈に、思って、ました…。
でも日が落ちて、夜が来れば、お山の様子はすっかり変わって。
肌寒さに、痛みを増す足に、何よりも…
(…暗、い……。)
暗闇とはどうしてこうも人の心を不安にさせるのでしょうか。
さっきと同じ場所に居るはずなのに、全てが得体の知れないものになってしまったような…。
ならせめて眠ってしまおう。
そう思っても、妙に敏感になってしまっている五感がそれを邪魔してしまって、目もどんどん冴えてきてしまって…。
恐怖心に支配されて、心細さまでも意識してしまって。
う、と声が漏れていく音に気付けば…どうやら私は、泣いている…ようです……。
―――
……みょうじが、戻らない。
疾うに他の人間共はここ始まりの地に帰還し、戦果の累算までも終えようとしている。
いくらみょうじが担う地が深遠にあるとはいえ…夕刻とは指し難い、六の刻までも過ぎようという時分。
(…やはり、何か…あったのか?)
どうにも、不穏な胸騒ぎが、治まらん…。
「…なぁ、みょうじ…戻って来ない、な…。」
そう口火を切ったのは、やはり日向、か。
『うん…流石に、心配だよね…。』
小泉が続けば、
『ああ、捜しに行った方が…良いのではないか?』
辺古山の提言が通る。
「……俺様が、征こう。」
…むしろ、苦慮している位ならば、逸早く。
そう名乗り出るべきであった、と。
悔やむように吐き出せば、人間共の視線が俺様へと集っていく。
「田中一人で大丈夫か?俺も一緒に…。」
日向の立言は尤もではあるところだが…
「…フン、案ずるな…俺様には破壊神暗黒四天王も居る…。
何より、貴様等のような只の人間如きには荷が重い話なのだ…闇に呑まれた魔嶽をなめて掛かろうものなら、貴様等も帰還出来るかどうか解らんのだからな。」
…貴様等は俺様に任せ、先に戻っているが良い。
残すと同時に、俺様の背へ飛び架かる声々には耳を傾けず、
まさに漆黒の天鵞絨を纏おうとする深遠たる魔嶽へ足を向ける。
―奴等の瞳に、俺様の姿が可視出来なくなっただろう頃合を読み。
己の極限をも超えんとすべく、全てで以て疾駆する。
ただ、みょうじを、一刻も早く…。
…否。
俺様が、彼女の無事を、確認したいがその為に。
止まるところを知らぬように、更と加速を促し続けていくのだ。
――
「…みょうじッ…!」
駆ける速度は僅かと落とさず、喚び掛ける声も辺際に。
「……みょうじ、何処だ…何処に、居るのだ…。」
もう灼陽の力は及ばぬところとなり、
漆黒の天鵞絨に身を包み、魔嶽はその暗黒面を現している。
(…大方の採掘場は廻ったはず…ならば何処、だ?)
「…クッ……おなまえッ…!!」
何故、何故あの刻、俺様も共に赴くと。
そう一言、たった一言を、言わなかったのか。
何故彼女を…一人にしてしまったのか。
こんなにも…こんなにも悔悟する事になるならば……
彼女に、もしもが…あったならば、
俺様は…俺様、は…。
自責の念に潰される想いが、息を上げていく。
「…はッ…おなまえ……おなまえッ!!」
ただ、それでも、彼女を喚び、喚び求めれば、
『…う…ぅ…っ…、
…た…なか、くん…?』
下方から、泣声と、か細く弱った彼女が、俺様を喚ぶ…声が、…聴こえ、る…。
欲した彼女の応えに、
…俺様が幻妄、か?
と…恐察も過ぎったが…、
譬え、それであろうとも。
…その一筋の藁を手に、急ぎ彼女の姿を捜せば、視界の隅に切り立った崖地が映る。
まさか、と覗き込めば、
瞳を濡らしたおなまえが、こちらを見上げて、いる…。
……紛れも無く、彼女…だ。
確かと交う視線にまで、己が想いを識っていくように。
彼女が姿を観れば、こうも心が…和らぐものか。
…ああ、やっと。
僅かながらの安穏に浸り、改めて彼女の様子を量る。
(顔に、まだ朱も挿しているな…。)
付き纏った危惧の多くが消えていけば、思わず顔が笑み緩むが…事は何も、好転してはいない…。
「…おなまえッ…無事、か!?待っていろ、直ぐに引き上げてやる!!」
『うぅ…うんっ…!たな、か…くん…ごめん、ね…。』
――
四天王に命を下し、噛み切らせた樹木が蔓を縒ってロープと成し、
絶えずぼろぼろと、大粒の雫を溢す彼女の元へと伝い、引き上げてやる。
……引き上げたと同時に、心から安堵したのだろう。
『…っ田中くんっ!!』
「なッ、おなまえ…!?」
おなまえに抱き着かれ、自然と顔に業火が盛るが…俺様の胸中で泣き続ける彼女の視界には映らない事が幸い、か。
その後もしばらく離れなかったがその為に…
躊躇われる思いもあったが…少しでも心安らぐ助けとなれば、と。
そっと、彼女の頭に手を遣り、軽くと撫でてやれば、
ぐりぐりと、もっととでも言いたいかのように……
俺様が胸へと、頭を押し付けるようにする、おなまえ。
(……ッこれ、は……可愛らし過ぎる、だろう…!!)
…思わず、添えるだけとしていた左腕にも力が籠もったが、不可抗力、というものなのだ……。
――
だいぶ落ち着いたものの、足を捻ってしまったというおなまえを背に負うて。
…何故横抱きにしなかったのかと、早くも俺様は悔恨の念に駈られている…。
ぎゅっと俺様の首元に両腕を絡め、体重を預けるようなおなまえ。
どうも、この体勢、は…密着、し過ぎる訳で…だな…。
…当たっ、て…いる、それから…意識を逸らすべく、一刻も早く、帰投する事だけに専心する。
(…う、ぐッ…
…何も、考えるな…考えれば、身が滅びる、ぞ…!!)
思いと掛けずに訪れたその僥倖は、
俺様の身と心に浸みた憂事と、駆け摩ったその労力への褒美…とでも、思う事と、しよう…。
…しかしそんな俺様が煩雑等、微塵も知らんおなまえは、
無邪気なまでに俺様へと話を振ってくるのだ。
『…そういえばさっき、田中くん…私の事、名前で呼んでなかった?』
うぐ、ぉ……何故、そういうところにばかり気が回るのだ、貴様はッ…!
もっと自らの事を顧みるが良いッ…!!
…そんな恨み言を述べたところで、俺様が失態を闇と葬れる訳でも無く…。
真っ当たるそれを探し、言葉を重ねるに至る。
「……そ、それは…だな…?…き、貴様には、解し難い話と、なるやも…しれんが…。
…そうッ!…召喚が儀式の為だ…。
貴様の姿があまりにも見えんものだったからな…?
よもや別次元へでも迷い込んだかと案じた訳でだな…。
召喚の術式を発動させるには、契約せし者の真名を喚ばねばならんからな…!!
俺様が貴様の名を喚んだ事とて、必要な過程だったのだ…。」
…まぁ、おなまえと契約を交わした事実は、まだ無いのだが。
フハッ!とあくまで強気に豪胆に告げておけば、
『そっか、儀式の為だったのかー…。』
…疑わぬ彼女の素直に救われる…。
「…ああ、そういう、事だ…。」
が…、
いくら理由付けの為とはいえ、これで彼女が名を喚ぶ契機さえも、自ら捨てたようなものだな…。
小さく短く息を吐き、その念を心内から外へと逃がすように耐えれば、
『……うーん、そうなんだ…。
でも、なんかね、私ね、名前で呼ばれるの…嬉しかったよ?』
俺様の顔を伺おうとしているのか、彼女の重心が動く。
現に、自棄におなまえの声が、近い。
その体勢に、音叉する声に、その一動に。
「なッ…貴様、な…にを…。」
マインドが直接と揺さ振られるような、甘美な響きを伴っているかのように感じてしまうのも、無理はないだろう…。
だというに、
『…んーとね、だから、もう呼ばれる事がないなら、残念だなーって。』
先までの絶望たる状況から解放され、すっかり安心し切っているのだろうか。
あっけらかんと、おなまえがそのような事まで言ってくるのだ…。
正直、俺様の方が保たん……。
…ならばいっそ、それさえも逆手取り、俺様が主導権を握るしか、あるまいか。
「……そうか。
ならば、貴様が…正式に、盟約を結ぶならば…以降も貴様を…真名で、喚ぶ事とするが…?」
未だやや近くに感じる彼女の横顔へ、届かないながらも視線を送れば、
『…ほんとっ?うん、結びますっ!』
…少々、事々しいまでに反応し。
やはり届かないながらも、その笑顔を声から絵と形し映し視る。
……しかし随分と、安易な盟約だな?
呆れんばかりの彼女の返答さえも、どこか現今は、彼女が無事に流されるように。
「…良し、ならば以後も貴様を名で喚ぶと誓ってやろう。
だが…貴様も、二度とこのような事が起きんよう、第一に俺様を喚ぶと誓え。
何時、如何なる刻も、だ……良いな、おなまえ?」
確と名で喚べば、
『…うんっ、解りました!』
彼女の声と身が、とっと跳ねる。
…先から、どうにも軽くは無いか?
ふっと苦笑が雑じるが、ぎゅむ、と絡まされるその腕が、力を強めたように感ぜられれば、
そんな疑心すらも倒錯していくのだから、痴れていくようだ。
まぁ…解っておらんならば、訓化するもまた一興、か。
改めて触れた彼女が熱を想い笑ってしまえば、
またもおなまえが嬉々としたような声を上げる。
『それにね、私…なんだか、助けに来てくれたのが田中くんで…すっごく、嬉しかったの。』
不思議だよね、と可笑しそうに、からと笑ったかと思えば、
でもね、と少し、トーンを下げる彼女に、驚嘆から開き掛けた口を再び閉じる。
『…もう、こんなに真っ暗になっちゃって…だから、誰か来てくれても、明日だって、思ってたから。
……それでも、田中くんは、来てくれた、から。
田中くんが来てくれて、すごく、すごく嬉しかった。
本当はやっぱり、怖かった、から…。
でも、田中くんの声を聞いたら、色々へっちゃらだって、もう大丈夫だって、思えて…すごく、安心できたの。』
そう急に、
再度俺様が背にぴたり、と、
身を寄せ預けるような彼女とその言葉を、
ままと受け取って、良いものか。
…だが譬え、それが俺様が傲りだったとしても。
これを逃しては、廃るが男というものだろう…?
「…おなまえ、両腕に力を込めろ。
……確り、俺様に掴まっていろよ?」
『?どうし……ぇ、わっ!!』
彼女の右脚を引き、両足を右手で捕らえては、
俺様が正面へと運び、膝裏と腰に腕を回す。
そして彼女が顔と俺様が顔を、数mmと違わず対するように固定すれば、
「…おなまえ。
先の言葉だが……それは、俺様に惚れた、と意味取るが…良い、のか?」
視線を逸らすその間も与えぬように、
体勢が変化に付いて行けずに呆然とするおなまえに、
飾らずの言葉をぶつけてしまう。
それが悪手かどうかも、省みず。
時機を手中に、彼女を手中にせんとして。
運命すらも、捻曲げ誘ずるかのように。
…やがて、見詰め合うのみの刻から、ぱちくりと。
瞳を瞬かせて、おなまえがその路を刻む。
『…え…と……。
…そうなの、かも、しれない…ね。』
…少し身を捩り、頬を紅潮させて。
彼女が微笑うは、常闇の中でもなんと可憐に栄える事か。
「…ならば、更なる盟約を交わす必要があるな。
…その唇、贄と捧げて貰おうか。」
もちろん貴様に、拒否権等無いのだがな?
『…んっ…。』
その言葉が彼女の鼓膜を揺らすより逸く、
彼女のそれに口付けて。
軽く、触れ合わせるだけで、
衰弱している彼女を気遣い、放してやる。
たった一秒に満たかどうかの盟約で、すっかりと。
その身まで熱を上げ、染まり上がる彼女に、微笑んで。
そのまま彼女を横抱きにし、停めた歩みを再開していく。
少し唇を気にしながらも、
どこか俺様を伺う彼女の目線までもが悦と為れば、
彼女を捜し求めて駆け擦った事実等無かったかのように、
足取りは、どうにも軽い。
…ましてや、そろり首元に両腕を回し、顔を寄せ埋められようものならば。
今宵は、帰投した後も、絶えず彼女の傍に居てやろう。
彼女が、真に安堵して、その心身を休められるように。
…まぁ、俺様も…
やっとと手にしたおなまえの傍で、更なる安息を得たいのだ。
「おなまえ。」
『!?は、いっ…?』
びくり、と音を立て、見事に声を引っ繰り返す彼女は、何を想い焦るのか。
それすらも愛しさへと変換されれば、和らぐのは自らの声に他為らず。
「…今宵は、…いや、これからは、俺様が片時と離れず共に居よう。
…だから、まずは、己が快復に専心しろ。
俺様の為にも、だ。」
同時に、ぐ、と彼女を抱く両腕に力を込めれば、
『…うん。』
ぎゅ、と回される腕が力を強め返させる。
それに応えるように更に腕に力を注げば、
彼女もまたそれを強め、応えてくるのだ。
しばしそんな答酬をし合い、その仕合わせと倖せに酔わされれば、
始まりが地まであと僅かな事さえも、
盲目と気付くに至れず…。
出迎えた人間共の注目が的となる事さえも、
同じく先に知るには至れんのだった。
終
*****
なんでしょうか、、、内容が薄いようで大変申し訳なく…どうか埋めてください…。
最後バカップルっぽいっすよねぇ…ぐふぅ…(自らダメージ負う系のやつやで…。)
というか井澤の主人公ちゃん怪我し過ぎですよね可哀想だ!!!涙(全部お前のせいな)
なんだろう…おんぶしたら色々な感触に焦る田中くん、が山場だったのかなぁ…(聞くな)
ノーマルな田中くんは、ある程度自分が不利な位置になると逆襲してくるタイプの俺様と考察される場合が多いですね…窮鼠猫を噛む的な…(おいちょっと待て)
そこらへん等等、また考察ページにでも不法投棄させて頂けましたらと思っておりますので、もし万が一ご興味がございます方々は、そちらにてお逢いできましたら嬉しい限りです。
とにもかくにも突発的よく解らないなお話で申し訳ございませんでした。。
今回もお付き合い頂きまして恐縮です、本当に有り難うございました…!
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