幻想
濡れ烏と真紅の蜜果。(スーダン・田中眼蛇夢+おまけ)
※お相手は田中くんです。濡れ烏に逆襲を。の続き…と申しますか、おまけのような…感じです。
少々おまけとするには長く…ギャグ感も前作より強いので、別のお話…アフターストーリー(?)な感じとさせて頂きました。
※こちらも田中くん聖誕祭兼救済企画の為、俺様度増量(井澤比)でお送り致します。
結局は俺様不足な井澤救済企画になってしまいますね(うわぁ)
※同じ黒髪ロング主人公ちゃんです、やっぱり能力設定がございませんので、引き続き素敵にカスタマイズして頂ければと存じます。
※元々おまけ仕様の為、短めかと思われます。
あ…こちらもあくまでも井澤比です、申し訳ございません汗。
*****
俺様がおなまえの反論を全て封じるまで、
そしておなまえが熱を逃がすまで、
やや刻を要したが…無事に始まりが地(集合場所)に帰着する。
無事に戦果も呈し、
晩餐までどうしたものか、と僅かに思索していれば、
『…あ、田中くん、左右田くんのお見舞いに行かない?』
…今は俺様と共に居るというのに。
何故あの下卑たゴミの名等出すのか。
もはやおなまえの声が奴を呼ぶ事も、慮る事すらも、苦々しい。
拠って、そんな発議は…受けられん、受けられんな。
「…却下だ。」
敢えて素っ気無く、俺様が気分を害している事を明らかにする。
んー、やっぱり…だめ?
と、見上げられる表情に不服はないのだが…請うところの内容が問題なのだ。
依然として俺様が首を振らねば、
『でも…田中くんと、こうして居られるのも…左右田くんが休んでくれたお陰かな、って思って。』
ちょっと、不謹慎だけど、ね。
そう、小さく、微笑む。
…まぁ、言われてみれば…それは、多少なり事実ではあるか…。
ならば、見舞いというよりも…
釘を刺しに行く、という方向性なら、認めても良いな。
…おなまえに今後集らんよう、おなまえが俺様のものとなった事を、言明してやろうではないか。
フッと短く、嘆息し、
「…仕方が無いな、貴様がそんなに言うならば…共に、行ってやろう。
むしろ、貴様と左右田を二人にする訳にもいかんからな…。」
そう言えば、またおなまえは少し顔を赤らめていくが…直に笑顔に戻り、
『…ありがとう。じゃあお見舞いに何か持ってかなきゃ、ね。』
――
そう告げるおなまえに連れられ、ロケットパンチマーケットへ踏み入る。
『やっぱり、定番はフルーツかな…?』
「…何でも良いだろう、左右田なんぞの為に、貴様が悩む必要も無いのだからな。」
『んー、でも…風邪引いてる時は辛いだろうから、色々考えてあげないと。』
…フン、おなまえにそこまで慮ってもらえるとは、実に幸せな事だな、左右田よ!
まぁ、おなまえは俺様のものだが、な。
真摯に見舞いの品を選ぶ様子をただ見守る。
…と、時に意見を求められた。
『ねえ、田中くん、バナナとかどうかな?一人でも食べ易いし。』
無邪気過ぎる程に。
「…却下だ、断固として、却下だ。」
…その理由は、己で思量する事だ…。
『え、そんなに…?んー、困ったな。』
また少し刻を経て、
『じゃあ…おりんごは?風邪の時は、すりりんごにすれば食べ易くて美味しいし、身体にも優しいし。』
「…それは、摩り下ろして…やるという事か?」
『えっ?…うん、そうだけど…それ位ならしてあげられるから。』
「ならば、却下だ。
…何故貴様がそこまでしてやらねばならんのだ。」
却下なものは…却下なのだ。
『えっと…病人、だから、かな…?』
…何も解っておらんな、おなまえ。
このまま任せておいてはどうなる事か。
仕方なく、俺様も品を見て回る。
…まぁ、もちろん、見舞う気等、全く無いが。
「…これで、良いのではないか?」
手間が少なく、おなまえが手を掛ける必要も無い。
『おみかん…?んーあんまりお見舞い品には聞かないけど…。』
「…食し易く、ビタミンも豊富だ。魔菌の駆除にも有効だろう。」
悩むおなまえを押し切ろうと論じたのだが、
『あ、そっか…栄養価で考えるっていうのもあるね。
…私もうちょっと、向こうの棚も見て来ようかな。』
…要らぬ情報を与えてしまったらしい。
この後も品選びに数十分は費やす事となり、
(…いっそこのまま、ここで時を浪費し…左右田の元へ行かせん方が、良いのではないか…?)
そう、思寄りさえした程だ。
―――
結局はおなまえが真紅の蜜果(りんご)を持ち、
左右田がコテージへと向かった。
…どうしても、と聞かなかったのだ。
その事がどうにも…面白くないのだが…
そんな俺様の様子に、彼女が気に掛ける気配は微塵もない。
『じゃあ…すりおろしてくるから、ちょっと待っててね?』
(…やはり、貴様が…擦るのだな。)
…俺様ですら、そのような事をして貰っておらんというのに。
左右田なんぞの為に、貴様は…看病まで、するというのか。
醜悪たる、それだと…解っているのだが、
やはり、許し難いものは…許し難いものだ。
先の言葉を残し、おなまえが席を外せば、必然と、否が応にも、ゴミと二人となる。
改めてその事実にも気づき、眉間が深く刻まれていく。
ただでさえ居たくもない空間。
顔が視界に入る事すら嫌気がさす相手。
…当然と、苛立ちばかりが募り、無言が空気を支配していく。
…中で突如と、雑じる雑音。
「…田中おめー…マジで今日は…ずっと、みょうじと2人っきりだったのかよ…。
みょうじが見舞いに来てくれたのにおめーも居るとかよー…くっそぉー…。」
…魔菌が為だろう、定常よりは煩わしくないゴミの言葉に、
より実感が募る、甘美たる勝利。
「ハッ!その通りだ…。
そしてもう一つ、貴様に告げるべき事がある…。」
たっぷりと、勿体を付け、
「…今日日を以って、おなまえは俺様のものとなったのだ。
故に、今後貴様は、おなまえに触れる事等言語道断だ…。
言葉を交わす事も、視界に映る事さえも無い様にする事だなッ!!!」
フハ、フハハハハ!!!!
声高に、宣言し、悦に入り、笑ってやるのだ。
「なっ…!?おい、嘘…だろ!?そんな一日一緒に居ただけで、かよ…!?」
明らかに狼狽する左右田。
その様は実に面白いな…。
フン、思い知るが良い…貴様と俺様の差は、これ程までに開いているという事をなッ!!
「はっ!!ちょっと待てよ…まさか、お前ら…採集終わってからも、なかなか来なかった理由って…、そういう事、なのかよ!?」
「…フン、何とでも推慮するが良い。
とにかく、以後おなまえに近寄るなよ…。」
…故意に深意を漂わせておく。
貴様の見舞いの品に刻を割いた等と、言ってやる事も無いしな。
左右田が無様に啼泣し始めた折、
『お待たせ。はい、左右田くん、どうぞ。』
すりおろされたそれを持ち、おなまえが戻る。
…笑顔で渡すおなまえに、再度胸中がまざと荒立ってしまうのは、俺様の我欲に他ならんのだが。
しかしながら、
「…みょうじ、どうして、どうして田中なんかと…!!」
そう訴える左右田は、やはり無様としか言い表しようもないな。
『え?えっ?どうして泣いてるの?大丈夫…?』
…どうやら左右田の想いすらも気付いていなかったらしく、困惑しているおなまえを、
熱に浮かされているのだろうと言いくるめ、左右田から引き離す。
そしてこれ以上は感染が危惧されると、とくと諭すのだ。
――
しこうして、ゴミが空間より連れ出したところで、
右手を引き、身体を寄せ、抱き締める。
『えっ…ゎ…。』
次第に紅く染まる顔を隠すように、
俺様の胸に埋まっているおなまえの顎を捜し、掴み上げれば、
真紅の蜜果と化したおなまえの、潤む瞳と視線を合わせる。
「…あまり、俺様を妬かせてくれるなよ…おなまえ。」
『…っ…え…と…。』
ごめん、なさい…。
と、解っているのか、いまいのか。
それでも益々と顔を熱くしながら、謝辞を述べるおなまえが、どうにも愛おしい。
「…そうだ、貴様は…俺様のもの、なのだからな。
易々と、他の男に笑い掛けるな。」
…そう令すれば、彼女の言承も待たず、口付けをする。
『…ふ…ん……。』
唇を重ねるだけの、浅い口付けで、
言葉を移すように。
『…ぁ……ん…。』
力を込め、彼女の細い身体を更に寄せ。
長く、長く、彼女の唇から、戒めの言葉を刻むのだ。
――
…明くる朝。
その場景を見られていたのか、それとも深意を多分に匂わせた事が原因か。
俺様とおなまえの事は島中に知れ渡る事となっており…
盛大なまでに尾ひれが付いた内容に、おなまえがまたこれ以上ない程に真紅に染まり、俺様に異議を申し立てる。
『た、田中くんっ!…左右田くんに、なんて…言ったの!?』
私がっ…居なかった時に…何か言ったんだよね?
うー、と唸るように、怒っている。
それすらも…可愛らしい、としか…思えんのだが…。
そして、なんだ…。
…彼女の知るところでは無くとも…いずれは、そうなる話なのだ。
そう、だから、敢えて。
「…覚悟をしておけ、と言ったであろう?…決して遠くも無く、いずれはそうなるのだ…。
俺様は今をその刻としても…良いが、な?」
と、不敵に告げれば、熱量でショートしたかのように、絶句する。
…無理強いをするつもりも無いが、どうにも可愛いのだから…つい、困らせたくなって仕方ない。
彼女の愛らしい反応だけで、満たされる。
何時か…それだけでは、本当に、抑えられなくなる刻が来るのだろうがな。
もはや深紅に染まり上がった彼女の、漆黒の髪束を優しく撫ぜる。
…再度全身で抱き締め、また反応を見て。
この愛しさすら、愉しんでしまう事としよう。
終
―――
覇王様お誕生日おめでとう俺様増量企画第2弾、でございます…はい、申し訳ございません。
只今猛烈に罵られいる感を最大限に感じていますいっそ素敵(帰って来い)
個人的には俺様してると照れないのですが…根本が嫉妬深いんですね田中くん。
そんなところが少し可愛ければ良いなぁ…(願望止めろ)
全体的にこの2本は甘くしたかったんですが甘くなってないかもしれません、大変申し訳ございません(深謝)
井澤の自己満足企画にも関わらず、お付き合い頂きまして幸いです。
お読み頂きまして有難うございました!
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