ガラクタなウタ【跳ね馬と小鳥】
カレンダーに印を【ディノヒバ】
生徒手帳に申し訳ない程度についているカレンダーに、ひっそりと小さな印をつけた。
最近立場上仲が良くなった、異国の友人から連絡がきたからだ。いわく、
次週の月曜には来日するからよろしく頼むと。この日付は必ず覚えていなければならなかった。
印をつけた日はあっという間にやってきた。
いつもと同じ学生生活。だが、他の風紀委員は気づいているだろうか。
いつもと同じ風を装う雲雀の機嫌が少しだけいいことに。ほんのわずか、落ち着きがないことに。
「よぅ、哲」
時間を見計らって応接室を退去し校内を見回っていた草壁に、小さく声がかけられる。
だらりと手を上げたのは、懇意にしているメガネとヒゲのイタリアンマフィアだった。彼がここにいるということは、
草壁とすれ違うようにして応接室には彼のボスが入っていったに違いない。いいタイミングだったと、彼は思った。
「また雲雀が世話になる」
「はは、よせやい。それ言ったらうちのボスこそ世話になってらぁ」
几帳面に頭を下げる草壁に、ロマーリオが豪快に笑った。
「お前がさりげなく恭弥を一人にしてくれてるから、うちのボスは報われてるんだからな」
二人の主は知っているだろうか。短い逢瀬にできる限り邪魔が入らないようにと、
心を砕いている存在がいることを。
「雲雀が幸せであればいいだけだ」
ふっと遠くを見るように草壁は微笑んだ。立場は違えど、
ボスを支えるナンバー2としての思いは共通している。だからこそ、
お互い連絡をとりあって、少しでも雲雀とディーノが会う時間をとれるように画策しているのだから。
草壁が雲雀に抱く感情は、複雑なものなのだろう。畏怖のような、尊敬のような
恋愛感情のような。ロマーリオがディーノに対して持つ忠誠心とも少し異なるだろうが、
彼の盲目的なまでの献身は雲雀が率いる風紀委員の中でも群を抜いていた。草壁がただ祈るのは、
雲雀が幸せであれという一点のみ。口癖のようにロマーリオに語るその言葉は、
自分を殺してでも雲雀に幸せになってもらいたいという、どこか親心めいた何かがいつもかいまみえるのだ。まるで、
ディーノを思うキャバッローネの皆のように。
雲雀にとってのファミリーは、ボンゴレだけではないらしい。
「恭弥は幸せモンだな、お前らがいて」
「はは、まだまだだ」
謙遜する草壁の肩をばしばしと叩き、ロマーリオは人好きのする笑顔を浮かべた。
「さて、ちと早いが、呑みにでもいこうか。うちのボスが今日は邪魔するなって言ってたからな」
「いつもの店か」
「ああ、あそこの芋焼酎が一番うまい」
あのバカップルの苦労話でも肴にしようや、と歩を進めるロマーリオに少しだけ笑い、草壁も彼に続いた。
2010.7.13up
蛇足:またディノヒバ出てないですが、ディノヒバ作品だと言い切ってみる……!
ナンバー2二人、結構好きです。ボスが大切でならないから、めんどくさいとか大変だとかわかっていても、
ついつい世話を焼いてしまう人たち(笑)ディノヒバはみんなに愛されていると信じてます。
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