誰かに聞いた怖い話
・・・保健室16
.
『お腹が痛いの…』
その時、彼女の口からは、小さな悲鳴が洩れたのです
そこにはあの子が!
いいえ…それは違いました
振り向く彼女の瞳に映る児童の姿は、確かに一瞬あの子と見間違える位、背格好や雰囲気が似ていたのです
けれども、お腹に左手を添え蒼白い顔色でそこに立って居る児童は、あの子とは全くの別人でした
良く見ると亡くなった児童とは、多分同じ位の学年なのでしょうが…
そこに立って居たのは、前髪を眉毛の辺り迄垂らした女の子だったのです
『ごめんね、びっくりした?何処が痛いの…お腹のどの辺?』
彼女は自分の見せた醜態を取り繕う様に、その女の子に優しく話し掛けました
『先生、職員室に御用があるから、ねぇ一寸行って来ても大丈夫かな?』
彼女は机に向かって書き物をしていましたが、大事な用事を思い出し、ベットに横たわる先程の少女に向かって声を掛けたのです
『…』
少女からの返答はありませんでした
そこで彼女は、閉め切られたカーテン越しにもう一度声を掛け様として思い止まり、そっと保健室を出ようとしたのです
『あたしも…死ぬの?』
カーテン越しの言葉でした
[前頁へ][次頁へ]
[戻る]
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!