誰かに聞いた怖い話
・・・廃墟にて7
.
『うん、ドアノブが回った』

尋ね掛けられたその友人は小さく頷き、そう答えたのでした

そうして開けてみろよと急かす別の友人の言葉に振り向いた彼の顔は、大きな緊張と少しの怖れで彩られていた事が、何年も経った今でも私の記憶から消える事は無いのです



ギィー…



その錆び付き不気味な軋みを辺りに響かせながら、ゆっくりと開け放たれる扉の先には、一体何が私達を待受けているのでしょうか?

此の時の私は思わず息を詰め、いつもよりも私の心臓は大きく脈打ち、その音が隣りに居る友人達に聞こえてしまうのでは無いかと、それだけが気掛かりで横目でそっと周りを窺ってみたのです



けれども、私のその心配は無用の物でした

その場に居た皆々の顔には、私と同様に大きな緊張と小さな怖れがありありと表われていたからです



そして私達四人の視線を射る眩しい光に、一瞬その力を奪われた眼が本来のその力を取り戻した時、私達の見つめる視線の先に映った物は、殆ど壁一面を覆い尽くす一枚板の大きなガラス張りの窓から遠方に臨める青い海と、それらを遮ろうとする高く茂った緑の樹々と、そして辺り一面に転がるビールやジュースの空き缶の山だったのです

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